ご挨拶

地域病院にも大学の実践的な研修の場を創ろう!

須磨崎亮教授
事業推進責任者
筑波大学医学医療系小児科 教授
須磨崎 亮

 人口減少が日本の直面する大きな課題であるとの認識が広く共有されるようになり、安心して子どもを産み・育てる環境整備の一環として、小児周産期医療の向上が強く求められています。一方、産科医・新生児科医などの人材不足に加えて、妊婦の高齢化、小児・周産期医療の進歩などにより、より高度な知識・技能を有する専門医療人の育成が喫緊の課題となっています。私は、このような状況から小児周産期領域ではとくに、地域病院においても臨床研修に並行してoff the job trainingができる、いわば病棟の隣に実践的な大学院教育の場を設けるような新たな教育システムが必要と考えます。具体的には、eラーニングによる体系的な知識の提供、TV会議システムを用いた双方向コミュニケーションによる対面学習などITを活用した遠隔教育が極めて有効です。さらに、医療技術の修得を目的とした短期間のインテンシブコースを組合せる事により、魅力的な教育プログラムの構築が可能となります。
 茨城県では県と大学が力を合わせて、医師の教育・研修に力を入れてきました。筑波大学では、文部科学省大学改革推進等補助金の支援を受けて「周産期医療環境整備事業(人材養成環境整備)」を実施して、平成21~25年度の事業期間中に小児科、産婦人科、小児外科をめざす初期/後期研修医が60 名と大幅に増加し、出産を機に常勤職を辞す医師は全くいなくなりました。さらに寄付講座やバースセンター開設、地域基幹病院における産婦人科医療の再開などの成果も得られました。茨城県は高速・大容量の情報通信ネットワーク「いばらきブロードバンドネットワーク(IBBN)」を活用して、小児周産期領域に専用の情報通信網を構築し、大学病院と地域病院の小児・周産期施設をがっちりと結び合わせてくれました。また、本県の小児周産期医療を担っている若手医師の多くは、寄付講座の設置されている東京医科歯科大学と筑波大学から派遣されています。このような環境を最大限に活かして、ITを活用した高度医療人養成プログラムを開発し、このモデルを全国に普及させる事業を展開するために、平成26年度から5年間で課題解決型高度医療人材養成プログラムを開始します。本事業によって、日本全国で本領域の高度医療人を著増させる事に貢献するのみならず、医師不足地域における研修環境が飛躍的に向上し、地方における小児周産期医療の脆弱化を解決できる切り札になると確信しています。
 本事業の実り大きな成果をめざして、関係各位の積極的な参加をお願いいたします。

域周産期医療を支える国立大学の連携の役割

久保田俊郎教授
事業推進副責任者
東京医科歯科大学大学院
生殖機能協関学教授
久保田 俊郎

 近年産婦人科への若手医師の参入が年々減り、この産婦人科医不足が原因で周産期医療が危機に立たされております。慢性的な産婦人科医不足は、ひとりひとりの産婦人科医への負担を増加させ、加重労働と医療訴訟の多さから産婦人科の志望がさらに減るという悪循環を生みだしています。この問題は新生児科も同様であり、これに地域格差も加わり特に地方での周産期医療は危機に瀕しております。
 東京医科歯科大学は東京都心に位置しますが、その中でも小児科・産婦人科は、茨城県の地域周産期医療に大きく貢献しております。茨城県南部と本学の周産期医療の充実を図る目的で、小児・周産期地域医療学講座が平成22年度より開設されました。その結果、茨城県の地域小児・周産期医療を支える新しい人材が順調に育成し、この両地域間における情報共有化(IT)と教育研修を支援するシステムが活性化しております。寄付講座設置後の4年間で、東京医科歯科大学医学部附属病院の周産期医療は充実し、この地域での小児科・産婦人科の勤務者も大幅に増加しております。さらに平成23年度より、茨城県での地域医療を担う人材育成を目的に茨城県特別枠推薦入試が実施されており、すでに8人の優秀な人材が茨城県の地域医療を支えるべく当大学で勉学に励んでおります。
 本学と茨城県とのこのより緊密な周産期医療体制をさらに強化すべく、筑波大学小児科との連携をベースに、平成26年度から5年間での課題解決型高度医療人材養成プログラムが、このたび文部科学省に採択され開始されましたことは大きな喜びであります。本プログラムの実施内容としては、第一に、魅力ある総合的・包括的周産期医療研修プログラムを整備し、卒後周産期医療を目指す医師やコメディカルを重点的に教育・育成することが挙げられます。具体的には、本学と筑波大学および茨城県南部の医療機関が相互に連携して、同じミッションの元、周産期医療に関わる専攻医や大学院生の臨床研修や教育の環境を整備し、特にITを活用した高度医療人養成プログラムの開発を強力に押し進めます。さらに、女性医師の継続・復帰支援、院内助産院の構築、新生児医療機器管理に習熟した臨床工学士の育成、周産期における心のケア専門家の育成などにも力を尽くします。
 このような周産期医療の質の向上を確保するための医療人材養成のプログラムの実現と発展が、二つの国立大学とその関連施設に留まらず全国的に波及し、現在危機が深刻化する周産期医療の救世主になることを期待しております。関係各位のご協力を、何とぞ宜しくお願い申し上げます。