プライマリ・ケアの現場では、すべての職種に専門職として多職種連携能力は必須であり、総合診療専門医を取得した段階で、地域のさまざまなセッティングで、さまざまな職種と協働しながら最善のケアを提供する多職種連携実践能力はある程度修得している。しかしながら、地域のリーダーとして活躍する総合診療医には、連携を実践するのみに留まらず、さまざまな職種を対象とした効果的な多職種連携教育を企画・運営し、自らが連携を実践できる専門職を養成する能力および現場での経験をエビデンスとして発信するために関連する研究を実践する専門的な能力を有する、多職種連携教育者としての働きが求められる。
本コースでは、関連する理論的背景を理解した上で多職種連携教育カリキュラム開発・実践する能力および多職種連携教育に関するリサーチを行う能力を有する多職種連携教育者を養成することを目的とする。このためには、多職種連携協働および多職種連携教育の理論的背景の理解および、コミュニケーション、チームビルディング、リーダーシップ、リフレクションや研究を実践するためのスキルなどさまざまなスキルが必要となる。
このコースは、多職種連携教育者に必要な能力の修得を目的とした1年間のコースである。本コースでは、特に「理論を伴った実践」を重視する。具体的には、本コースは理論を学ぶOff the job trainingと、それを実践で生かすOn the job training、そしてその経験を確実に定着させる振り返り(reflection)を有機的に組み合わせた形で構成される。本コースを通して、さまざまなセッティングで、さまざまな職種を対象とした多職種連携教育を通して、連携能力を有する医療人の養成を行うことができる多職種連携教育者を養成することを目指す。
【Goal(s)】
【Objectives】
本プログラムは、①レクチャー等による理論的な学習(Off the job training:Off-JT)、②受講者自らがそれを臨床や指導の現場で実践する演習・実習(On the job training:OJT)、③経験を確実に定着させる振り返り(reflection:RF)の3段階で構成されている。詳細については7を参照のこと。
下記の教科書を組み合わせて用いる。それ以外の資料や参考文献については、適宜配付する。
修了条件
・すべての科目において、3分の2以上の講義・演習に出席していること。
・指導教員および専攻医による観察記録で一定以上の評価を得ていること。
・多職種連携教育プログラムの企画・実施・評価についてのポートフォリオで一定以上の評価を得ていること。
・多職種連携に関する研究発表を行っていること。
上記により総合的な評価を行う。
科目名 | 時間数 | 内容 | |
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多職種連携に関する 理論講義 |
時間:2時間 講演会:春学期 | 目的 | 多職種連携教育の基礎的な理論を学ぶ。 |
内容 | 多職種連携・協働(Interpreofessional work:IPW)、IPW実践のためのコアコンピテンシー、多職種連携教育(Interprofessional education:IPE) 、成人学習理論、チームの特性の定義、チーム形成の過程、効果的なチームに必要な要素、チームワーキングに必要な技能 等 | ||
進め方 | レクチャー形式で学ぶ。(2時間×1回) | ||
医学教育 概論 | 時間:2時間 時期:4月 | 目的 | 医学教育の基礎的な理論を学ぶ。 |
内容 | 成人学習理論、経験学習のサイクル、カリキュラム開発、reflection、学習評価、ポートフォリオ評価 等 | ||
進め方 | レクチャー方式で学ぶ。(2時間×1回) | ||
卒前IPE演習 |
時間:M1 チーム討論(2コマ) M2 在宅ケアコース(1週間) Team-based learning(TBL) (半日) M3 ケア・コロキウム (1週間) M4 チーム医療実習(1週間) M4-M5 クリニカルクラークシップ(通年) 時期:各カリキュラム実施時期 |
目的 | 卒前IPEの実践を行うことができる。 |
内容 | 筑波大学医学群における卒前IPE(左記)にファシリテーターとして参加する | ||
進め方 | 筑波大学医学群における卒前IPE(左記)にファシリテーターとして参加し、多職種連携、医学教育の理論に基づいた実践を行い、振り返りを行う。 | ||
卒後IPE 演習 | 不定期 | 目的 | 卒後IPEの実践を行うことができる。 |
内容 | 現場の多職種を対象としたIPEの企画、実践 | ||
進め方 | カリキュラムプランニングの理論に基づき、関係するさまざまの職種の特性を理解した上で、さまざまな職種と連携・協働し、現場の多職種を対象としたIPEの企画、実践を行い、振り返りを行う。 | ||
振り返り 演習 |
時間:卒前 M1 チーム討論(2コマ) M2 在宅ケアコース(1週間) Team-based learning(TBL)(半日) M3 ケア・コロキウム (1週間) M4 チーム医療実習(1週間) M4-M5 クリニカルクラークシップ(通年) 卒後:不定期 時期:各カリキュラム実施時期 |
目的 | IPEの経験を学びに変えてキャリア成長につなげる「振り返り」について学ぶ。 |
内容 | 卒前および卒後のIPE実践後の学習者の振り返りを担当する。 | ||
進め方 | 指導医陪席のもとで振り返りを実施し、指導の内容および方法について、あとで指導医からフィードバックを受ける。 | ||
コアレクチャー 演習 |
時間:3時間 (マイクロ75分、実施90分、振り返り15分)×3回 時期:不定期18:30-20:00 | 目的 | 総合診療医を特徴づける能力の中で、多職種で問題解決をはかる臨床倫理等について、効果的なレクチャー・演習が実施できる。 |
内容 | 臨床倫理、4分割法、ファシリテーション、振り返りなど | ||
進め方 |
それぞれの内容について、以下の4ステップを行う。 ①事前準備 ②指導教員によるマイクロティーチング ③レクチャーの実施 ④指導教員との振り返り |
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臨床疫学 統計学基本講義 |
時間:2時間×1回 時期:春学期 | 目的 | 研究実施に必要な疫学、統計学の基本事項について学ぶ。 |
内容 | 研究デザイン、バイアス、サンプルと母集団、変数の種類、代表的な検定方法、信頼区間、p値 など | ||
進め方 | レクチャー方式で学ぶ。(2時間×1回)。 | ||
研究ワークショップ 演習 |
時間:半日×2回 時期:不定期 | 目的 | 質的研究・量的研究に関してワークショップ形式で実践的に学ぶ。 |
内容 | 質的研究および量的研究実施に関するスキルの修得 | ||
進め方 | 大学院地域医療教育学分野の大学院生を対象とした質的研究および量的研究に関するワークショップに参加し、研究スキルについて実践的に学ぶ。(2回) | ||
研究個別指導 | 時間:1時間×月1-2回(回数は研究の進捗により変動) 講演会:指導医と調整 | 目的 | 多職種連携・多職種連携教育に関する研究について、指導医の指導のもと、研究を計画し、実施、発表を行う。 |
内容 | 研究テーマ決定、研究計画書作成、倫理申請、研究実施、分析、発表 | ||
進め方 | 連携に関する各自の研究テーマについて、上述の研究のプロセスについて、個別指導を受けながら進める。 | ||
多職種連携教育 FD演習 |
時間:ケア・コロキウム、Team-based learningに関するFD 各2時間 時期:FD:11月、12月 | 目的 | 多職種連携に関するFDの企画・運営のノウハウを学ぶ。 |
内容 | 多職種連携に関するFDにタスクフォースとして参加する。 | ||
進め方 | 各セッションにおいて、実際にファシリテートを担当する。指導の内容および方法について、あとで指導医からフィードバックを受ける。 | ||
ノンテクニカル スキル演習 |
時間:1時間×10回 時期:不定期(休日) | 目的 | 多職種連携に必要なチームマネジメントのスキルを学ぶ。 |
内容 | チームビルディング、ファシリテーション、リーダーシップ、コンフリクトマネジメント、TEAMS(BP、BI、BR)、MBTI、タイムマネジメント など | ||
進め方 | それぞれの研修会に参加する。 |