肥満や運動不足に不安を感じる方々,体力や筋力の衰えを感じる方々,健診や人間ドックにより糖尿病,血清脂質異常症,動脈硬化症,脂肪肝による肝機能障害を指摘された方々,また,肝炎や肝硬変の慢性肝疾患に肥満や糖尿病を合併している方々にメデイカルチェック,食事指導,運動指導,各種運動療法を行っております.メデイカルチェックの所見より体の中で異常なところを調べ,医学的な問題点を明らかにしていきます.病気の予防や治療のための対策を講じて,患者様の支援を個別的に行っております.下のチャートは,「つくばスポーツ医学・健康科学センター 健康増進部門」における健康回復のためのアプローチを記したものです.
わが国では食生活習慣の欧米化と慢性的運動不足に伴い肥満者が増加しています.また,最近の人間ドック全国集計成績では肝機能異常の頻度が急増していますが,これには非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease : NAFLD)の増加が大きく関わっています(表1).肥満者の約3割はNAFLDに罹患しています.
NAFLDには糖代謝異常も高率に認められ,その10-40%に糖尿病が発症するとされています.肥満や糖尿病を放置しますと,NAFLDから非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis : NASH),肝硬変,肝癌が発症します(図2).NAFLDの進展や肝発癌には糖尿病が大きく関与することが明らかになっています.
NAFLDの治療には食事療法に加えて運動療法を実践することが有用です.適度な運動により筋量を増やし糖の利用率を増加させ,糖尿病を改善することが可能となります.患者様の生命予後の向上に繋がる重要な問題です.
肝臓生活習慣病外来では,NAFLD,NASH,肝硬変の慢性肝疾患の患者様へのメデイカルチェック(体組成の測定,筋力測定,肝臓と骨格筋の超音波診断)を実施して,慢性肝疾患の病態改善と肝発癌の抑止による生命予後の向上に向けた診断,食事運動指導を介した治療のサポートを行っております.
サルコペニアは
サルコペニアは,加齢が最も重要な要因ですが(一次性サルコペニア),身体活動の低下,疾患(糖尿病,慢性肝疾患,呼吸器疾患,腎疾患,癌など),栄養不良も要因となります(二次性サルコペニア).日本フレイル・サルコペニア学会の作成した診療ガイドラインでは,サルコペニアの予防や治療には適切な栄養摂取(特にタンパク質),運動習慣と豊富な身体活動量が強く推奨されています.
そこで本学附属病院の「つくば健康科学センター」では,これまでの肥満や生活習慣病患者への栄養・運動指導の実績を基盤として,「フレイル・サルコペニア外来」の開設しております.当外来では,アンケートによる食生活と身体活動に関する調査,体組成測定,体力測定,血液検査,画像検査を実施します.検査結果に基づき,サルコペニアの予防や治療に向けた食事と運動に関する適切なアドバイスやサポートを行います.
関節痛や腰痛,筋力の低下,身体能力の低下により十分な運動療法が実施出来ない方,筋力アップを希望される方に対して3次元全身振動トレーニングを実施します.本治療法は筋力を増強させ,また,筋肉量を増加させることでエネルギー代謝量を増加させ,内臓脂肪の減少と糖代謝の改善が期待出来ます.附属病院専属の運動療法士(トレーナー)が担当します(図8).