筑波大学附属病院
筑波大学附属病院 総合臨床教育センター

臨床腫瘍コース:メッセージ

コース長

関根 郁夫

 臨床腫瘍コースの目標の一つは、「出来る内科医」になるということです。「出来る内科医」とはどんな医師を指すのか、というのは深遠なテーマでいろいろな意見があると思いますが、私は1) 一般内科の診断推論ができること、2) 初めて診る疾患に対し、当たらずとも遠からずの診療ができること(適切な専門医を紹介することも含む)、3)どんな状況であっても患者と家族を励ましながら頑張っていく道を探していけること、の3つが重要であると考えています。

 もう一つの目標は、がん薬物療法の専門家になるということです。これはただ単に専門医資格を取るということに留まりません。患者さんの紹介状(診療情報提供書)を読んだら直ちにこれから起こることを予想し、今何をしなければならないかを判断して、それを説明しながら患者さんを導いていかなければなりません。患者さんががん難民になるのを食い止めるのは、何か特別なシステムではなく、医療者と患者さんとの地道な関わりです。さらに、evidence-based medicine (EBM) の時代に於いては、evidenceを使うのみならず、それを自ら作り出し情報として発信することが、専門医にとって大切なミッションです。医師の仕事をよく見ると、情報を受け取る側に立つ医師と発信する側に立つ医師に二分されていることに気づきます。新しい情報を作ることは物造りと同じで創造性を発揮する機会ですし、情報を発信していくと新たな出会いも増えてきて、大きな楽しみとなるでしょう。生涯に渡って情報を発信している医師は、医師全体からみると僅かではありますが、先生方には是非そのような医師を目指して欲しいと思います。

指導医

森脇 俊和

 初期研修医のときに担当となったある胃がん患者さんがいました。その患者さんは既に骨髄転移のためDICを併発しており、何も出来ないまま亡くなってしまいました。その後、がんについて学びたいと思い研修を積んでいく過程で様々なことを経験し学びました。化学療法を受けている患者さんは状態が変化しやすいこともあり、密に接して信頼関係を築くことの大切さを学びました。そして何より、専門的な知識を持ったことで、初期研修医時代に経験した同じような患者さんでも化学療法によって状態を改善させることを目指せるようになりました。さらに新薬の開発がめまぐるしく、臨床試験も盛んに行われています。臨床試験に参加したり、ときには自ら臨床試験を考えたりと、医学の進歩を肌で感じることができます。決して気楽にできる分野ではありませんが、医師として非常に充実した日々を送れることをお約束します。
 後期研修では、有意義な研修をしていただくため、がん薬物療法専門医の取得を考慮しつつ、個々の希望に沿いながら研修プログラムを組み立てていきますので、将来腫瘍内科を目指す方は是非ともこのコースを選択してください。お待ちしております。

レジデント修了者

山本 祥之

 私は、消化器内科後期研修後にがん薬物療法を専門とすることを決意し、臨床腫瘍コースを履修しました。大学病院内で各診療科をローテーションすることで、多がん種について効率よく質の高い専門知識および経験を積むことができ、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医の取得が可能となります。また、単一臓器のみならず臓器横断的・全人的に臨床腫瘍学を学ぶことにより、抗がん剤の有害事象やオンコロジー・エマージェンシーに対する適切な対応や緩和ケア等を含めた総合的ながん患者さんに対する診療能力の向上が期待できます。更に平成27年度より腫瘍内科学講座が新たに開講し、腫瘍内科を志す研修医の皆さんを強力にバックアップできる体制が整いました。茨城県内はがん薬物療法を専門とする医師がまだまだ不足しています。是非当コースを選択され、茨城のがん患者さんのためにもがん薬物療法を盛り上げていきましょう。