特に近年は、がん患者さんを対象とした妊孕性温存医療に力を入れています。日本癌治療学会で作成された「小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン」2017年版 に沿い、がん治療と妊孕性温存の狭間で悩む患者さんの力になれるよう努力しています。
がんの治療を最優先としながら、患者さんへの適切な情報提供やがん治療医との綿密な連携を大切にし、患者さんお一人お一人の思いに寄り添う医療を提供いたします。
がん治療の進歩により、多くのがん患者さんが病気を克服できるようになりました。
妊孕性温存とは、抗がん剤や放射線などのがん治療によって生殖機能の低下を来す前に、妊娠する力を保存しておく方法です。そして、がん治療が一段落したときに不妊治療を行い、子どもを産み育んでいきます。
妊孕性温存は、男性にも女性にも関わる大切なことです。抗がん剤の種類や放射線の照射部位によって、どれくらい妊孕性が低下するかは異なります。また、年齢、がん治療までの期間、病状などによって、妊孕性温存の可能性は異なります。
子どもを持つという人生の重要な選択肢について、がん治療を行う患者さんと共に考えていくことを私たちは大切にしています。
妊孕性温存の詳細については、以下のリーフレットをご覧下さい。
★「知っておきたい精子凍結保存の知識」(準備中)
★女性患者用リーフレット(準備中)
精子凍結 | TESE 精巣内精子採取術 | 精巣組織凍結 | |
---|---|---|---|
対象疾患 | 精巣腫瘍、脳腫瘍、白血病、リンパ腫、消化器がんなど。 凍結精子を用いたパートナー女性の不妊治療の際には男性患者本人の同意が必要 |
左記のうち、充分な射出精子が得られない方、射精自体が困難な方 | 小児がん |
対象年齢 | 思春期相当~青壮年 パートナーとなる女性の年齢により40歳以上でも対象となる | 小児~青壮年 | 小児 |
婚姻 | 問わない | ||
受診から凍結保存までの 期間 |
1日(初診日のカウンセリング、同意書受諾ののち、同日に精子凍結保存が可能) | 数日~1週間程度 (入院が必要) |
1~2週間程度 |
特徴、問題点 | 精通していない小児では困難 1回で充分な精子が回収できるとは限らない |
手術が必要であり侵襲を伴う。手術によりがん治療が遅れる可能性がある 手術をしても充分な精子が回収できるとは限らない 精巣が未熟な小児は対象にならない |
精巣が未熟な小児を対象とした研究段階の医療であり、この技術をヒトに応用して妊娠に至った例は2020年現在報告されていない。 手術が必要であり侵襲を伴う |
当院での対応 | 実施中 | 実施準備中 | 研究段階であり、当院では行っておりません。 |
がんの治療後であっても、精巣機能検査やカウンセリングを行うなど、妊孕性に関するご相談への対応をいたします。可能な限り、治療回数が少ない時期にご相談下さい。
胚(受精卵)凍結 | 未受精卵子凍結 | 卵巣組織凍結 | |
---|---|---|---|
対象疾患 | 白血病、乳がん、リンパ腫、消化器がん、悪性黒色腫、胚細胞腫瘍、脳腫瘍、肉腫など | 乳がん、リンパ腫など | |
対象年齢 | 初経後~45歳未満 胚移植は50歳未満 (当院の場合) | 16歳~40歳程度まで | 0~40歳程度まで |
婚姻 | 既婚(事実婚を含む) | 未婚 | 未婚、既婚 |
受診から凍結保存までの 期間 |
2~8週間 | 2~8週間 | 1~2週間 |
特徴、問題点 | 胚あたり妊娠率
30~35% (年齢により異なる) |
卵子あたり妊娠率4.5~12% (年齢により異なる) |
多量の卵母細胞を凍結できる。 凍結した卵巣内に微小ながん細胞の残存病変を含む可能性。 卵胞の生着効率が悪い |
当院での対応 | 実施中 | 実施準備中です。 現在は情報提供ののち、他院にご紹介いたします。 |
研究段階の治療。現在当院では行っておりません。 情報提供ののち、他院にご紹介いたします。 |
筑波大学附属病院総合がん診療センター生殖医療部門 TEL:029-853-8096
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