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インタビュー:宮本病院

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地域、院内、精神科で活性化した多職種連携

看護学校や保育園、訪問介護や特別養護老人ホームを運営する地域医療の拠点。PT、OT、ST、精神科と訪問看護のNs、Phのリーダー8名がプログラムを受講しました。

1955年に開設された茨城県稲敷市の宮本病院。2013年には茨城県指定認知症疾患医療センターも開設し、看護学校や保育園、訪問介護や特別養護老人ホームを運営するなど、地域医療や福祉を支えている拠点病院のひとつです。そんな宮本病院では2009年は一般、2014年と2019年は精神科の病院機能評価を受け、多職種連携と人材育成の課題が浮き彫りとなりました。

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その解決策を模索していた最中、PsySEPTAがスタート。老人科部長の須磨﨑加壽子医師は「作り上げた先生はよく存じ上げている方々。元々その考えを信頼しておりましたし、プログラムを拝見したところ、まさに求めていたものでした。これを活用しない手はないと即決しました」と導入した経緯を語ります。その開講と同時にインテンシブプログラム「認知症ー筑波大学Ver.コース」を各部署のリーダーとなるPT、OT、ST、精神科と訪問看護のNs、Phの8名がプログラムを受講しました。

PsySEPTA導入前後にまず変化が見れらたのは、多職種が参加するカンファレンスの増加。例えばリハビリテーションカンファレンスはPsySEPTA導入後、全体数が4倍に。翌年度からPhと管理栄養士も新たに加わり、外来部門もスタート。ターミナルカンァレフンスや退院支援カンファレンスは5職種以上の参加数に増加傾向が見られ、チーム医療を機能させる能力が高まりました。

医療安全・院内感染等の問題にも効果を大いに発揮。チーム医療・ケアにおける質の向上、課題解決へ前進。

入院患者さんへの対応にも変化がみられました。入院初期に、Ns、OT、PTらが患者さんとのコミュニケーションを通じて得た情報やアセスメントを積極的に多職種で共有。すると、治療やケア介入までの時間に短縮傾向が認められ、転科転棟が円滑に進むようになったのです。患者さんについて、各職種が多面的に把握できるようになった結果、患者さんとのコミュニケーションもスムーズになりました。

すべてのPsySEPTA受講者で必修となるコミュニケーションスキル実習に参加した後の変化として、「院内連携に留まらず、アウトリーチで関わる地域のスタッフとも『地域ワンチーム』となるモチベーションが上がり、これにより地域へのアウトリーチの機会も増えました」と須磨﨑医師。宮本病院では地域の特性に則した精神科チーム医療・ケアにおける各職種の協慟により、日々遭遇する医療安全・院内感染等の問題にもその効果を大いに発揮し、多職種連携で実績を出しています。

「病院が抱える課題は複雑で、一朝一夕で解決する訳ではもちろんありません。しかしこの素晴らしいプログラムを活用しながら、できる部署から少しずつ病院全体で継続して改善に取り組むことが重要です。PsySEPTAの事業推進メンバーとも互いにフィッードバック、連携をしながら、職種間の障壁のない、病院・施設の個性を生かした人材育成も試みていきたいと思います」

宮本病院では今後も継続してPsySEPTAに参加し、チーム医療・ケアにおける質の向上、課題解決へ前進していまきす。

受講メンバーに芽生えた多職種連携の重要性の自覚

受講メンバーがコーディネート役となって同部署や他部署にアプローチ。カンファレンスに参加する職種を増やしたり、積極的に互いの意見を取り入れたりするように変化。

リハビリテーション科室長でP Tの永長健一さんは、PsySEPTAインテンシブプログラム「認知症一筑波大学Ver.コース」に初代メンバーとして参加しました。短時間のeラーニングであるため、職場での休憩中、自宅で のオフタイムなど、仕事の合間を縫ってパソコンやスマホ等で受講。宮本病院精神科のリエゾン、リハビリ、コミュニティケアを担うメディカルスタッフの育成を中心として体系的なプログラムに一年間取り組みました。

まず永長さんが現場で感じたのは、受講スタッフらによる多職種連携の重要性の自覚です。「他の職種がどんなことを実際にやっているのか。どんな考え方をしているのかをPsySEPTAで理解できました。それによって受講メンバーが同部署や他部署に働きかけ、限られたメンバーで行っていたカンファレンスに参加する職種を増やしたり、積極的に互いの意見を取り入れるようになったのです」

認知症は地域包括支援センター、介護・福祉機関、その他の関係機関や地域住民、行政など、多くの組織や団体で患者さんのサポートをするもの。地域や取り巻く多種多様な環境によってフレキシブルな対応が求められ、院内連携以上に協慟のあり様は異なります。

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「PsySEPTAでは、地域包括支援センターとの連携、社会福祉士との関わり方など初期集中支援チームについてどのように動けばいいのか、道筋を示してくれました。病棟Nsは患者さんに対して、入院中だけでなく入院前や退院後の地域での生活にもより目を向けるよう変化しましたね」と視野が大きく広がったことを明かします。

PsySEPTA導入から一年、宮本病院では人材育成を目的としたプロジェクトチームが始動。各部署間でのミーティングルールの再確認、修正、マニュアル化が進むなど、波及効果も生じています。

「カンファレンスひとつにしても量は増えましたが、次はその質を上げていかなくてはなりません。新入職員会での部署紹介で、他職種にPT、OT、STの紹介を行ったり、他職種の専門性を全員が理解できるよう、職種の紹介一覧を各部署に置いたり。退院後の患者さんのモニタリングやカンファレンスの行い方、急性期、回復期、生活期とどのフェーズでも活用できる共通シートの作成とその活用法を考えなくてはいけないと感じています」

永長さんは今後、参加メンバーを通じた自部署へのフィードバックと多職種連携教育を継続し、認知症関連施設での連携ツールの作成、ファシリテーターの役割を定着化させるなどのPsySEPTAを通じて得たプラスアルファの課題の修正を実践したいと語ります。

「最初は手探りの状況でしたが、色んな立場での知識や役割を知ることができましたし、他の病院がどのように課顆解決に取り組んでいるか、様々なケースを知る機会になり、大変参考になりました。これを踏まえて、多職種連携が目に見える形で強化されていければと思っています」


※ PT…理学療法士、OT…作業療法士、ST…言語聴覚士、Ns…看護師、Ph…薬剤師