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インタビュー:前島朋子さん(前島レディースクリニック)

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産後の母親達のメンタルを多職種でフォローしたい

密接な関係性がある婦人科と精神科。母親のメンタルケアに、多職種連携の必要性を実感。

つくば市の婦人科医院「前島レディースクリニック」のマネージャーである前島朋子さんは、キャリア34年のベテラン助産師です。以前は都立病院に勤務していましたが、医師の夫と共に20年前、つくば市にクリニックを開業。10年前には主に出産後の母親をケアする産前産後ケア専門の助産院「ら・くな」をクリニック内にオープン、子連れで気軽に集まれる場所を提供する特定非営利活動法人「kosodateはぐはぐ」の代表理事も務め、茨城県初の家庭訪問型子育てサポート「ホームスタート」を展開するなど、地域の子育てに寄り添ってきたパイオニアです。

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そんな前島さんは助産師として地域の母親達をサポートしてきた中で、産後のメンタル問題の対応について課題を抱えていました。「地域の子育てに寄り添って実感したことのひとつが、出産直後のメンタルはこんなにも尾を引くんだということ。母親の辛さは妊娠中より産後がメイン。母親のメンタルの問題を紐解くと、一緒に歩んでほしい人に理解されない苦しさ、もどかしさに行き着くことが多々あります。実は婦人科と精神科は密な関係性があり、例えば精神科にかかっているけれども、月経をコントロールすると改善する場合もあります。逆に婦人科に月経不順や月経前症候群で来られる方が、色々とメンタルに問題を抱えている場合もあるのです。ネットワークがあれば、もっと患者さんの話を深く聞いて他の病院に紹介ができますが、単科のクリニックはブツブツと繋がりが切れてしまいがちなのも歯痒さを感じていました」

そこで、筑波大学精神神経科の根本清貴医師が代表世話人を務める「いばらき周産期メンタルヘルス研究会」など、様々な講演会や勉強会に参加。その中でPsySEPTAの存在を知る機会を得ました。ひとつのトピックに対して一方的に話を聞く形式が多い中、PsySEPTAは演習もあり、年間を通して学べる全く違うタイプのプログラム。興味を抱いた前島さんはインテンシブプログラム「周産期メンタルヘルスコース」に参加することにしました。

ベテランの医療従事者でもつまずく難関な内容も。異なる職種への気付きを得る機会に。

「他の職種の方々の内面で起こっていることに特化したプログラムって、今までなかったので新しいなと思いました。講師の先生が第一線で活躍されている方々でしたので、その先生のお話をこれだけたっぷり聴けるのはなかなかない機会。これを学べば、地域の母親たちをよりフォローできるのではないかと感じました」

コンテンツは、大学教授らによる最新の事例や理論を盛り込んだ内容で、好きな時間に受講できるオンデマンド型講義だけでなく、演習では大学病院の医師がファシリテーターとなり、同じコースの受講者らと共にオンラインケースカンファレンスに参加。オンラインで行われたコミュニケーションスキル実習では、総勢40名がグループに分かれてディスカッションやワークを行いました。

クリニックのマネージャー、助産院、NPOの活動など、毎日多忙な前島さんですが、「医療従事者に時間がないのは、プログラムを作製した先生方も重々承知していっしらゃるので、ひとつひとつのコンテンツは20分以内と短時間なのが良かったです。運営サイドのフローが充実していて、ひとつの単元をコンパクトにポイントを重視してまとめてありますし、ドラマ仕立てで分かりやすく、頑張りすぎずにマイペースでできるところが有り難かったです」とオフの時間に自宅でプログラムを少しずつ受講。熟読すべき重要事項はプリントアウトして、自作のテキストを作成するなど工夫を重ねました。

これまで勉強を重ねてきた「周産期」の項目はスムーズな進捗でしたが、他職種のベースとなる歴史背景や知識を学ぶ項目ではテストで苦戦。ベテランの医療従事者でもなかなか合格できない難関な内容も。

「それこそがPsySEPTAによる収穫ですし、大事な部分。医療従事者は、違う職種の方のことを意外と知らない。単科のクリニックにいると、大きな病院がどのように多職種連携しているかも分からない。名前は知っている職種でもこんなに学習が必要なんだなとか、歴史的な変遷があったり、色んなルートで学べるんだと知る機会になりました。世の中で起こっていることと遠ざっかているんだなと、改めて気付きを得ましたし、無駄なくやれたと思います」

多職種連携を発展させた地域のネットワークに期待

第一線で活躍する講師陣や共通認識のある多職種のスタッフとのコネクションは今後のメリット。各現場でコミュニケーションスキルを実践して、より一層患者さんへの配慮を。

中でも印象に残ったのがコミュニケーションスキル実習。オンラインによる同職種や他職種とのグループディスカッションでは、「他の職種の方が、看護師や助産師を威圧的に感じる場合があるようで、セルフイメージとは違う場合もあるのだなと驚きました。多様な疾患の特性に応じて最前線で対応する医療従事者は、自身の生活を犠牲にしがち。自分のこともちゃんといたわる、褒める、癒やしてあげる必要性も教えていただきましたね」と他職種とのイメージの差異、俯豚的な視点も得られました。

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多職種による事例検討会やロールプレイングを通して、普段連携することが少ない大学病院や他施設の、異職種や同職種メンバーと悩みや課題を共有する機会を得た前島さん。顔が見える関係が少しでもできたことは、単科のクリニックの医療従事者の一人として剌激を得たと確かな手応えを掴んでいます。

「普段接する機会があまりない先生方や、共通の問題意識があって高め合える多職種の方々とのコネクションもできたことは大きなメリット。 大病院の院内だけでなく、地域の色んなクリッニクが多職種連携できるネットワークができると、多くの患者さんが包括的な医療サービスやケアを受けられます。やはり専門性のある方が得意な分野に関わるのが一番ですから、PsySEPTAを通じた地域の横の繋がりにも、この先影響が及んでくれると嬉しいですね」と地域医療のネットワークの発展に対しても期待しています。

前島さんはクリニックのスタッフや他の医療従事者に多様な学習を可能にするPsySEPTAの受講を勧めながら、各現場でコミュニケーションスキルを実践。

「プログラムのノウハウをすべて実行するには鍛錬が必要ですが、できることから活用し、より一層の患者さんへの配慮を心掛けたいと思います」と地域の母親達の身体と心に寄り添い続けています。