5月11日(金)につくば国際会議場で薬薬連携講演会を開催いたしました。近隣の病院や保険薬局に勤務されている薬剤師の方をはじめとし、61名の方々にご出席いただきました。
当院薬剤部長幸田幸直教授が総合座長を担当し、テーマは「情報共有」です。先進的な取組をされている福井大学よりお二人の先生をお招きしました。
講演1
『有害事象回避のために連携を強化しよう!』と題して、福井大学医学部附属病院副薬剤部長の中村敏明先生にお話しをいただきました。
1993年に起きたソリブジン事件を例に挙げられ、病院と薬局間の情報共有・連携不足、処方した医師の薬の認識不足、薬剤師のチェック機能が不十分だったこと、これらが重なったことにより起きた背景を解説されました。また、患者さんの処方箋に検査データを記載し、薬局薬剤師に情報を提供している同病院の取組が紹介されました。
最後に、患者さんの最良のアウトカムのために、薬剤師同士が連携を一層強化していくことが重要であることを述べられました。
講演2
福井大学医学部附属病院薬剤部長の政田幹夫先生からは『医薬品適正使用~医療の中における薬剤師の役割~』と題してお話しをいただきました。
FDAと厚生労働省の、医薬品の危険性に対する表現の違いを挙げ、国内のみならず、世界中あらゆるところから情報を得る努力することが大切である、と述べられました。そして、医師と薬剤師のそれぞれの役割である処方権と鑑査権の相違を理解し、この役割を互いにきちんと果たすことが、安全な医療の提供には必要とされました。このためにも、今以上に病気に関する知識を持つことがこれからの薬剤師には必要である、と結ばれました。
ディスカッション
薬局薬剤師と医師・病院薬剤師等でカンファレンスなどは開催されていますか?
福井大学医学部附属病院では「疾病よろず勉強会」と題して勉強会を開催しており、年に3~4回1時間程度で毎回30名ほどの参加者があります。従来の電話でのやりとりはトラブルの元であるため、実際に顔を合わせて医師に専門領域の疾患と処方の意図を解説してもらうことで、相互理解を深めてもらっています。これによって不明点が質問しやすくなったとの感想もあります。
検査情報を処方箋に記載していて、疑わしい数値があった場合は調剤薬局から連絡はありますか?また患者の検査情報公開に関する勉強会等は開催しましたか?
まず、検査数値をランク付けし、緊急性があるものについては電話対応とし、次回の受診の対応で間に合うものについては、チェック・コメント欄等がある薬剤指導提供書というものをFAXしてもらい、当院薬剤部が中継地点となって処方医に渡します。その回答書を薬剤部から送信するというのが一連の流れとなります。また、勉強会は行っておらず、情報そのものを公開しております。病院の門前薬局と連携して情報をデータベース化しており、県全体へフィードバックしていく取組を始めたところです。
将来、【お薬手帳】に代わるようなツールがありますか?
ICカード1枚ですべてを網羅できるように情報を一元化できれば、無駄な医療費が減ることにつながっていくというアイデアは持っています。
検査情報を公開している福井大学では、データの不備があった場合の対応(定期的な検査が必要な項目が、予定通りに測定されていない場合など)は、どうのように対処していますか?
院内のシステ ムでチェックをかけており、リストとして挙がってきたものを薬剤部から医師へ伝えます。また検査データはいつ測定したかを表示して、活用できるものを提供 しています。そして、情報の記載がされるようになってからは、患者さんに対して自信を持って薬の説明が出来るようになったとの意見が聞かれます。