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ホーム > 研修等のご案内> 2012年 9月 7日 「ワークショップ 2012夏」を開催しました

研修等のご案内

 新病棟「けやき棟」の竣工も間近となった平成24年9月7日、 ワークショップ「次の一歩へ! 動き出したチームと教育プログラム」を開催いたしました。 筑波大学附属病院教職員と関連病院・機関から、多職種の81名の方々にご参加いただき、 活発な意見交換が行われました。


ワークショップの目的

 患者さん中心の医療を実践する我々スタッフが、笑顔で働くためには、 何をしたら良いのかについて、活動を開始したチーム・教育プログラムの報告を通して、 今後の医療チーム構築や教育プログラム運営に向けた課題を共有し、 参加者が共に考えることを目指しました。



【プログラムはこちら】

ワークショップの内容

 ワークショップは、総合臨床教育センターの瀬尾恵美子副部長の司会のもと、 大河内信弘副病院長の挨拶で開会しました。

 大河内副病院長からは、日本の医療水準は世界一であるが医療に関わる人材は少なく、 医療崩壊に向かっていることからチーム医療が注目されてきたが、 まだどの医療機関でも手さぐりの状態であることが紹介されました。 筑波大学でもそれぞれのチームが試行錯誤しながら良いものを作っていく段階であり、 この事業をきっかけに患者さんへのより良い医療の提供に発展することを期待しているとされました。

【報告1】 多職種連携による新たな医療チームで提供できた「食」

 まず、病態栄養部・岩部博子副部長と栄養管理室・浅見暁子管理栄養士から、 「摂食・嚥下サポートチーム」による新嚥下訓練食の開発と評価についての報告がありました。

 岩部副部長からは、「多職種連携」「食」の二つをキーワードに報告がありました。 これまでの多職種による食の提供について、 炎症性腸疾患患者サポートチーム(IBDチーム)や小児科NSTサポートチームの例を示し、 「多職種連携」による「食」の提供が心と体の治癒力につながるとの考えが示されました。

 続いて、浅見管理栄養士から嚥下訓練食見直しの活動について報告されました。 多職種による「摂食・嚥下サポートチーム」では、従来の訓練食の問題点を抽出し、 ①形態の統一化―嚥下難易レベルを考慮、②見た目・彩りに考慮した食事、 ③「お茶ゼリー 」の作成―交互嚥下に使用、の3点をポイントとした改訂を行ったことが、 新・旧訓練食の写真を交え報告されました。 多職種連携による改訂の結果、質の高い改善が実施できたことが紹介されました。

 また、嚥下訓練食の問題点を病院内で共有できた、 各専門職種と関わりを持ったことで境界領域の知識や意識が向上した、 などの成果があがったことも報告されました。多職種が連携しなければ真に安全な食は提供できない、 多職種連携により患者さんの一日も早い離床に貢献したい、という思いで報告が締めくくられました。


※ 試食会の記事を(国際学会ATBH Ⅵ(All Together Better Health Ⅵ)での発表ポスターも含め)、 本事業HPに掲載しております。詳しくは以下をご参照ください。

http://www.hosp.tsukuba.ac.jp/team_iryo/workshop/index.html#06

【報告2】 「多職種コミュニケーション」-始動した多職種連携新人研修

 チーム医療教育推進室の稲葉コーディネーターからは、多職種連携新人研修の内容ならびに、 新人職員の多職種連携の経験と研修前・後のチーム医療に対する意識の変化について報告されました。

 入職時からの多職種の円滑なコミュニケーションを目指し今年度から開始された多職種連携新人研修は、 附属病院の多くの教職員の協力により開催できたことがまず述べられました。 『多職種コミュニケーション』には全新人職員(189名)が参加し、 アイスブレイクに続くグループワークでは、 一機の飛行機のトラブル発生とチームでの対応を扱った映画視聴の後に、映画を見て考えたこと、 感想などをグループで自由に話し合ってもらったことが紹介されました。 続くグループワークの成果報告では、「緊急時の冷静な判断」、「日ごろからの信頼関係・連携」、 「報告・連絡・相談」、「ダブルチェック」などの重要性があげられたことが示されました。

 また、参加者アンケートの結果では、新人職員は多職種連携の意義は十分感じているものの、 研修医を中心に異なる職種とのコミュニケーションの経験は十分にはなかったことが確認され、 『多職種コミュニケーション』の体験により、 多職種連携の意義についての認識が高まったことが考えられると報告されました。 新人職員の医療チームの一員としての成長をこれからも応援していきたい、 との言葉で報告が終えられました。


※ 本研修については、アンケート結果も含めて本事業HPに掲載しております。 詳しくは以下をご参照ください。

http://www.hosp.tsukuba.ac.jp/team_iryo/workshop/index.html#02

【報告3】 診療にTWI:仕事の教え方を使う ―筑波大学附属病院の試み―

 ISO・医療業務支援部の山下慶三専任講師からは、 人材養成の研修法としてのTWI(Training Within Industry)研修の沿革・特徴の紹介と、 本事業での活動および今後の展望が報告されました。

 報告では先ず、産業界で長い利用歴を持つTWI研修が日本の医療界では全く実績がないこと、 他方、米国医療界ではTWI研修が徐々に認知を得ていること、 加えて本事業の支援で視察した米国シアトル子供病院スタッフのTWI研修の様子が紹介されました。 ヒトに教える作業を予め分解してステップ毎に重要な点を明確にし、 教える相手を“学ぶ気にさせ”、“やってみせ”、“実際にやらせてみて間違いを直し”、 “その後を見る”4段階を経てヒトに教える標準化された研修法は日本の医療界でも有効かつ価値高いものであることに、 視察者全員(4名)が納得を得たとの報告がありました。

 後半では、附属病院で実際に仕事の教え方(TWI-JI)と仕事の改善の仕方(TWI-JM)研修が実施され、 多職種に亘る総数31名の参加者が異口同音に研修の価値を認めていること、 またTWI-JIに基づく新規資材導入トレーニングも企画・実施することで、 資材導入後の現場スタッフの混乱を相当程度に低減したと報告されました。

 最後に、「仕事の教え方」「業務の改善の仕方」「人の扱い方」の3つの力量は “算数”に匹敵する基本的な実際知であろうこと、 それ故にTWI研修は患者中心の医療を実践する心豊かな医療人育成の礎となるであろうこと、 加えてその前提としてTWI研修の医療版化と職員教育体系への組み込みが大切と報告されました。


※TWI研修については、アンケート結果も含め本事業HPに掲載しております。 詳しくは以下をご参照ください。

【質疑応答と総合討論】

 フロアーから発せられた、 医師をはじめとした多忙なスタッフにいかにチームに参加してもらうかという疑問について、 メンバーの自主性を重んじたチームリーダーのやり方が功を奏している事例の紹介や、 他職種であってもお互いの置かれている状況を思いやり行動することで 活動が円滑に進むのではないかという提案など、活発な意見交換がありました。

 また、視察で参加された関係機関の方々からは、 筑波大学附属病院にはチーム医療を推進しやすい土壌があるように感じられたことや、 本事業には患者さんとスタッフがWin-Winになるというキーワードがあるように感じられた、 との感想が寄せられました。

 外部評価者の皆さまからは、チーム医療の問題は古くて新しい永遠のテーマであるが、 多職種が同じ場でカンファレンスを行うなどの日常的な活動の中でしか 解決し得ないことが述べられるとともに、 本取組がお互いの専門性を尊重しながら多職種で率直に意見交換ができる医療現場に向けた、 日本の医療が変わる大きなきっかけになることへの期待が示されました。


 最後に、事業推進責任者である前野哲博 総合臨床教育センター部長より、 社会のニーズに応える新しいモデルを作り全国に発信することを期待され、 本事業が文部科学省の補助金事業として採択されたことが説明された後、 チーム医療は今日の医療問題を解決する唯一の方法との考えが示されました。 限られたリソースで社会の要求に応える、 先進的なモデルを構築し示していくやりがいのある事業であると述べられた後、 このミッションを果たす取組の推進と参加者全員へのお礼の言葉でワークショップを閉会しました。

 外部からご参加のみなさんのご意見で、
本院の組織文化がチーム医療の実現に適しているらしい、
という新鮮な発見もありました。
院内で開始された様々なプロジェクトの報告から、
職種や職階の壁を越え全員で医療に取り組むことの大切さが
共有された一日でした。



 

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