治療の対象となる主な病気

治療の対象となる主な病気

陽子線治療は体への負担が少なく高い治療効果が得られるため、がん治療の有効な選択肢の一つです。しかし、すべての病気に対して行える治療法ではありません。
以下の条件を満たしていることが必要であることをご理解ください。また、陽子線治療に適しているかどうかは、当センターの専門医が総合的な見地から診断いたします。病気の種類や状態などによって、陽子線治療よりも他の治療法が最適であれば、附属病院の他の専門医と協議しつつ、別の治療法を提案いたします。

基本的な条件

  • 他の臓器への転移がなく、病巣が狭い範囲に限られていること。
  • これから陽子線治療を受けようとする部位に、
    以前、放射線治療を受けていないこと。
  • 30分間、同じ姿勢で動かずに寝ていられること。
  • 病気についての告知を受けており、患者さんご本人が
    陽子線治療を受ける意思を持っていること。

肝臓がん 治療期間:2~7週間

肝臓がん(肝細胞)がんのほとんどは、B型あるいはC型ウイルスによる慢性肝炎から肝硬変を経て発症するという経過をたどっています。陽子線治療は、がんに集中的に放射線を照射するため治療効果が高く、正常な肝臓へのダメージが小さいため肝機能の低下が起こりづらい治療法です。長年の肝炎や肝硬変により、肝臓自体ががんを発症しやすい状態となっているため、他の部位に新しくがんができることがあり、専門医による治療後の経過観察が必要です。

治療対象となる病態・条件など

  • 病巣が多くても3個以下であり、消化管に接触していない位置にあること。
  • 肝臓以外にがんがないこと。
  • 肝機能がある程度保たれていること。

治療にあたっての留意点

より精密に照射するために、肝臓にシャープペンシルの芯程度のサイズの金属マーカーを挿入する場合があります。挿入施術に関しては主治医や関係病棟の医師と相談のうえ決定します。

治療経過写真

  • 治療前治療前
  • →
  • 治療終了後2週間治療終了後2週間
  • →
  • 治療終了後2ヵ月半治療終了後2ヵ月半
  • →
  • 治療終了後8ヵ月半→無再発治療終了後8ヵ月半
    →無再発

前立腺がん 治療期間:5~8週間

前立腺がんの治療法は、外科的治療、放射線治療、ホルモン療法などの治療法があり、血液検査、画像検査、病理検査で治療方針を決定します。陽子線治療は,放射線治療のなかでは最も有効で安全性の高い治療法の一つです。受診の際には、泌尿器科の主治医と治療法についてよく相談されてから検査所見(特に生検組織標本)をお持ちいただくと方針決定が速やかに行えます。

治療対象となる病態・条件など

  • 臓器転移,リンパ節転移がないこと。
  • 病巣の状態によって、低・中・高危険群に分類されますが、
    低危険群の場合は陽子線治療のみ、中・高危険群の場合はホルモン療法を併用します。

治療にあたっての留意点

より精密に照射するために、前立腺にシャープペンシルの芯程度のサイズの金属マーカーを挿入する場合があります。挿入施術に関しては泌尿器科の医師と相談のうえ決定します。

肺がん 治療期間:2~7週間

肺がんは、がん細胞の形態によって、いくつかの種類があります。肺に限局したⅠ期肺がんの場合は、約2週間の通院治療が可能です。近くのリンパ節に転移の見られるII期およびIII期肺がんの場合は、化学療法の併用が必要なことが多く、6~7週間かけて陽子線治療を行います。通常の放射線治療に比べて陽子線治療は、肺や骨髄などの臓器への副作用の軽減が期待されています。

治療対象となる病態・条件など

  • Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期で、肺以外の臓器に転移のない非小細胞肺がん。
  • Ⅰ期の場合は、外科治療を希望しない場合や
    何らかの理由で外科治療が行えない場合が対象。
  • Ⅱ期、あるいはⅢ期の場合は呼吸器内科と共同して
    抗がん剤の併用治療を行います。

治療にあたっての留意点

治療中、治療後とも禁煙が必要です。
化学療法を併用する場合は,入院が必要な場合もあります。

治療経過写真

  • 治療前治療前
  • →
  • 治療終了時治療終了時
  • →
  • 終了後1ヶ月終了後1ヶ月

食道がん 治療期間:6~7週間

食道がんの治療法は、主として外科的切除が行われてきています。しかし、合併症や高齢のために手術に不安がある場合には、化学療法と併用した放射線治療が有効な方法です。この放射線治療の部分を、陽子線で行います。陽子線治療は,食道がんへの治療効果を保ったまま,脊髄、肺、心臓という重要臓器への副作用を減らすことができます。

治療対象となる病態・条件など

  • 内臓への転移がないこと。
  • 陽子線と抗がん剤を併用する化学放射線療法を行います。
  • リンパ節まで転移し、照射野の範囲に収まらない場合は、治療対象外です。

治療にあたっての留意点

  • 照射後の一定期間は禁酒です。
  • より精密に照射するために、食道にシャープペンシルの
    芯程度のサイズの金属マーカーを挿入する場合があります。
  • 化学療法と併用する場合は、消化器内科・外科の専門医と
    密接な連携をとって行います。

治療経過写真

  • 治療前治療前
  • →
  • 治療終了後2週間治療終了後2週間
  • →
  • 治療終了後2ヶ月半治療終了後2ヶ月半
  • →
  • 治療終了後8ヶ月半→無再発治療終了後8ヶ月半
    →無再発

頭頸部がん 治療期間:6~7週間

頭頚部がんには多くの種類があります。現在の陽子線治療の対象は鼻腔がん、副鼻腔がん、外耳道がんです。がんの種類として扁平上皮がんが多いですが、腺がんや悪性黒色腫にも、陽子線治療が可能です。腫瘍の発生場所、病理的組織診断、進行度によって実際の治療方法は異なりますが、外科的手術、放射線治療、化学療法を組み合わせた集学的治療を行うこともあります。

治療対象となる病態・条件など

  • ほかの臓器への転移がないこと。
  • リンパ節へ転移がないか、あるいは単一の照射野に全病巣が入る大きさであること。

治療にあたっての留意点

副作用は、病巣の大きさにより異なるため、診察時に詳しく説明します。

脳腫瘍 治療期間:5~6週間

脳腫瘍は頭蓋内で発生する原発性脳腫瘍と、ほかの臓器からの転移によってできる転移性腫瘍とに分けられます。脳腫瘍が疑われた場合、造影剤を用いたMRIなどの画像診断を行います。原発性脳腫瘍が疑われた場合は、最終的には手術で腫瘍を摘出し、摘出した組織の検査を行い、治療方針を決定します。

治療対象となる病態・条件など

  • 原発性腫瘍では悪性神経膠腫、手術による摘出が困難な髄膜腫や神経鞘腫など。
  • 転移性腫瘍ではほかの放射線治療が可能なため、陽子線治療は行っていません。

治療にあたっての留意点

治療ではできる限り視神経や脳幹などを避ける方向を選んで照射します。
病状によっては陽子線治療が適さない場合もあります。

頭蓋底腫瘍 治療期間:5~6週間

頭蓋骨の底、脳を支える部分にできる腫瘍を頭蓋底腫瘍と呼びます。腫瘍はいずれも深部にでき、多くの重要な神経や主要な血管などに隣接、あるいは癒着していることが多く、外科治療が難しい領域です。具体的には、脊索腫、軟骨肉腫などの疾患があります。そのほか鼻腔・副鼻腔や眼窩から発生したがんが、頭蓋底へ進展する場合があります。

治療対象となる病態・条件など

  • 手術が不可能な場合や手術で完全に摘出できない場合。

治療にあたっての留意点

治療ではできる限り視神経や脳幹などを避ける方向を選んで照射します。
重要な神経や臓器が密集する場所のため診察時に詳しい説明をします。

小児がん 治療期間:2~6週間

小児は放射線の影響を受けやすく、放射線を一定以上照射するとその後の骨の成長、知能発達、内分泌機能などに影響が出る可能性があります。また、小児がんが治った後に、長い期間を経て再び新しいがんができることがあります。これを二次がんと呼びますが、放射線治療を受けたことが影響すると考えられています。陽子線治療は、正常組織への放射線をできるだけ減らして、これらの合併症の発症を抑えることができる治療法です。

治療対象となる病態・条件など

  • 小児固形がんで放射線治療が必要な場合。
    病状によっては、他の放射線治療を勧める場合もあります。

治療にあたっての留意点

化学療法や手術と組み合わせて治療する必要がありますので、まず主治医と相談してください。
治療のタイミングが大切ですので、早めにご相談ください。

受診方法

主治医と当院の小児科・放射線腫瘍科の連携が必須です。当院の受診方法はこちらを参照してください。

※ご自身の病気が陽子線治療に適しているかどうか詳しくお知りになりたいたい方は、
こちらよりお問い合わせください。