本事業では次の①~③の教育研修を行いました。
①政府に認可された5つのレスキュー団体(1623, 1624, 1625, 1628, 1630)*に対する研修
*Foundation for assisting poor people of Lao PDR (1623), Vientiane Rescue (1624), Lao Red Cross Rescue Team (1625), China Foundation Rescue Emergency Call (1628), Houamchai Foundation (1630)
②首都ビエンチャンの3つの国立中央病院(ミタパープ病院、セタティラート病院、マホソット病院)の救急医・救急看護師
③本事業で設置支援を行った1195(日本の119番に相当)を受電する指令管制センターの指導医(救急隊の出動から病院到着までのプロセスを監督する)・指令員(救急通報を受信し、救急隊に出動指令を下す)
ラオスにおいて活動する救急隊のほとんどは専門資格を持たない一般市民です。救命救助についての標準的な教育も団体内では実施されていないため、一人ひとりの救急隊員が有する能力の差は大きく、どの救急隊が出動するかで、事故現場あるいは病院への搬送中に実施される病院前救護サービスの内容や質が大きく異なります。本事業では、継続的に質の高い救急隊を育てていくための教材をミタパープ病院と開発し、教育の標準化を図ることで、救急隊のサービスのばらつきを最小化し、サービス向上を目指しました。
番号 | 時期 | 期間 | 対象人数 | 活動内容 |
1 | 2022/8 | 5日 | 116人 | スキルトレーニング |
2 | 2022/12 | 7日 | 21人 | スキルトレーニング
シミュレーション 救急車同乗研修 |
3 | 2023/8 | 4日 | 22人 | シナリオ・トレーニング
分娩補助研修 シミュレーション・トレーニング タスク・トレーニング |
4 | 2024/2 | 2日 | – | 救急車同乗研修
総合演習(メディカル・ラリー) |
専門家が5つのレスキュー団体それぞれに対して1日間の研修を行いました。
研修内容は基本スキルのトレーニングでした。
少し誤った知識やスキルを持っている参加者もいましたが、研修を通じて正しい知識とスキルを身につけました。
研修期間の前半はミタパープ病院での集合研修、後半は各団体のステーションで研修を行いました。
研修参加者は各団体で指導者の役割を担う21人でした。
前半に行った研修では、スキルトレーニング、アルゴリズムトレーニングを行いました。
スキルトレーニングでは観察と処置についてトレーニングを行い、観察では初期評価、ESS入力、全身観察、処置では気道確保と止血のトレーニングを行いました。
アルゴリズムトレーニングでは初期評価、ESSの入力、全身観察を続けて行うトレーニングを行いました。
ESSに関しては、研修後には研修参加者全員が正しくESSへ情報を入力することができるようになりました。
後半に行った研修では、シミュレーショントレーニング、救急車同乗研修を行いました。
研修参加者が指導者となり、各チームのレスキューメンバーに指導を行いました。
研修で教わったことを他の人に教えることによって、研修参加者は観察や処置に対する理解が深まりました。
救急車の同乗研修では、専門家がレスキューとともに実際の事故現場へ行き、研修で学んだことを実際の事故現場でも同じことができるようにサポートしました。
事故現場には通訳が居ないため、ラオス語で書かれたカードを事前に作り、専門家はカードを使ってレスキューとコミニュケーションをとりながら指導を行いました。
実際の事故現場ではESSの入力も行い、レスキューステーションではパソコンでESSに入力された情報を確認しました。
研修では、シナリオ・トレーニング、分娩補助研修、シミュレーション・トレーニング、タスク・トレーニングを行いました。
救急車同乗研修では、隊員と救急現場に出動し、現場での対応状況の確認およびフィードバックが行われました。
また、ミタパープ病院が実施する総合演習に評価者として参加しました。総合演習では、レスキュー隊が参加し、交通事故、複数傷病者の発生等、救急事案のシナリオをもとに、各チームが対応にあたります。対応内容はミタパープ病院スタッフと日本人専門家により、評価・フィードバックがなされ、順位が競われました。総合演習は年に1度、ミタパープ病院主催の下で開かれ、隊同士が切磋琢磨する貴重な機会となっています。
医師・看護師については、重症な傷病者を治療できるスキルを持った者は少なく、救急医学や救急看護といった学問そのものも浸透していません。ラオスでは2020年に初めて救急医が誕生しましたが、その数も到底十分とは言えません。そこで、筑波大学の協定校でもあるタイ・コンケン大学と協力しながら、ラオス人医師・看護師の重症な交通外傷者の受け入れや蘇生スキルの向上を目的に、日本・ラオス・タイによる三角協力を通じた人材育成を展開しました。
番号 | 時期 | 研修テーマ |
1 | 2022/2 | Thailand EMS in COVID-19 |
2 | 2022/5 | Cardiac Arrest & Severe Trauma |
3 | 2022/8 | EMS System |
4 | 2022/11 | Stroke FAST Track |
コロナ禍で移動等が制限された2022年は、3か月に1度、コンケン大学を講師とした遠隔研修を行いました。
研修テーマは各回、ラオス側にニーズ調査のもと決められ、各講義では活発な意見交換がなされました。
当日参加が叶わない方がオンライン上で講義録画をいつでも視聴できるよう、YouTubeやGoogle Driveを活用し、研修効果の最大化を図りました。
派遣元 |
派遣期間 | 派遣人数 | ||
医師 | 看護師 | 合計 | ||
ミタパープ病院 | 2週間 | 2 | 9 | 11 |
マホソット病院 | 2週間 | 3 | 7 | 10 |
セタティラート病院 | 2週間 | 3 | 7 | 10 |
保健科学大学 | 4週間 | 8 | – | 8 |
合計 | 16 | 23 | 39 |
タイでの実地研修が可能となった2023年は、1月~7月にかけて、コンケン大学へ3中央病院の救急医・救急看護師および保健科学大学の研修医、計39名を派遣しました。
研修期間を3つに区切り、それぞれの期間の研修修了生は、2023年2月・5月はコンケン大学と3中央病院の遠隔で、8月にはコンケン大学をラオスに招へいし、対面でケースプレゼンテーションを行いました。
タイでの学びをラオスで活かすための具体的な意見も多く聞かれ、実りある内容となりました。
本事業では、指令管制センター(CCC)の設置支援を行いました。これに伴いCCCには、救急隊の出動から病院到着までのプロセスを監督する指導医、および、救急通報を受信し、救急隊に出動指令を下す指令員が配置されることになりました。
指導医はミタパープ病院から4名、セタティラート病院から2名、マホソット病院から2名の計8名が選ばれました。
研修講師は、協力機関であるコンケン病院が務め、遠隔研修や同院での実地研修(第三国研修)を行いました。コンケン病院は、かつて2000年代初頭に、タイの交通外傷死減少を目指して展開されたJICA技術協力プロジェクトのカウンターパート機関です。現在タイの救急医療をリードする立場にあるコンケン病院が周辺国を指導し、メコン地域における同分野におけるリーダーシップを促す本研修は、今回の草の根技術協力の一つの特色でもある三角協力の実践とも言えます。
2022年3月~5月に、講義とワークショップ(それぞれ全5日間)を行いました。
講義では、タイ・コンケンの救急医療サービス体制を例に、基礎知識の獲得を目指しました。
ワークショップでは、先の研修で習得したCCC運用に関する学びを基礎として、ラオスにおけるCCCの運用や救急車への出動指令の方法、搬送先の病院の選定に関するルール作り等に取り組みました。
2022年8月、コンケン病院へ指導医8名を派遣し、5日間の研修を行いました。
育成開始にあたり、専門家がミタパープ病院と教材を開発しました。これにより事業終了後も継続して標準的な教育が可能となりました。
研修は主にCCCで行いました。専門家による研修のほか、指令員として派遣されるレスキュー隊員が日々異なることから、現地スタッフによるシステム利用研修等も適宜行いました。
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