交通事故から住民の命を守る救命救急活動支援プロジェクト(Project for Stopping the Accident Fatality rise by EMS development and Road safety: SAFER)は、JICA草の根技術協力事業(2019年度第1回)に採択され、2021年6月24日~2024年7月31日にかけて実施したODA活用型の技術協力プロジェクトです。SAFERプロジェクトは、国際協力機構(JICA)と協力しながら、救急医であるプロジェクト代表を筆頭に、情報システム開発の技術者、交通工学の専門家など、国内の数多くの大学や専門家達と共に、ラオス首都ビエンチャンにおける交通事故死の増加を食い止める(Stop Accident Fatality rise)といった大きな挑戦、課題解決へと立ち向かっていく学際的な取り組みです。
「道路交通外傷が地域社会に与える社会的・経済的損失の軽減に貢献し、ラオス住民に生計向上をもたらすこと」を上位目標とし、首都ビエンチャン(VTE)における交通事故死者数の増加を食い止める事に繋がる救急医療体制(EMS)の構築を目指しました。
ラオスでは、急速な経済成長に伴うモータリゼーションや交通インフラの整備により、交通事故死者数が増加しており、首都ビエンチャンは同国において最も交通事故死が発生しやすい地域でした。また、ラオスでは病院到着前の救命救急活動はボランティア救急隊が担っており、病院との連携に改善の余地が大きくありました。そこで、交通事故数を削減し、救命率の向上や後遺症の軽減に繋げるべく、本プロジェクトを行いました。
SAFERプロジェクトの代表を務めております鈴木です。
まず、はじめに、SAFERプロジェクトのウェブサイトをご覧頂き、ありがとうございます。
世界では、年間の交通外傷死の数が135万人に達し、交通外傷は全体の第8位、若年層(5~29歳)では第1位の死因となっております。死亡者のうち若年男性の占める割合が特に多く、その経済・社会的インパクトも大きいのが現状です。また世界の交通外傷死の9割以上は低中所得国で発生しております。このままの増加スピードでは、2030年には交通外傷による死因は全体では第5位へと順位を上げる事が予想されています。
交通外傷を個人・コミュニティレベルで見た場合、当然ながら、患者本人及び家族に対しては不本意な形での死別を突然にして強いることとなります。本人は無念に尽きますが、不慮の死を遂げた患者を前に、遺族はじめ残された者の悲しみも複雑かつとても大きなものとなります。幸運にも死亡を免れた場合であっても、負傷した本人は重度の障害で苦しむことも珍しくなく、これらの障害はその後の長期にわたる人生、クオリティ・オブ・ライフの低下を来します。また”一家の大黒柱”が倒れた日には、本人含め家族が一気に貧困に陥るリスクが高くなる事も知られており、交通外傷の強いる苦痛は身体的のみならず心理的にも社会的にも甚大です。
2015年、SDGs 3.6「2020年までに世界の道路交通外傷による死傷者を半減」が定められました。しかし、その後も多く低中所得国においては半減どころか増加の一途を辿り、当初目指していた2020年には達成ができませんでした(現在SDGs3.6の達成目標年は2030年に延期)。これは各国とも懸命な対策を打ってきた上での結果です。低中所得国においては増加のスピードが先進国と比較しても早く、多くの低中所得国において救急医療体制は未熟です。負傷者が病院へと辿り着く前に命尽きているケースも珍しくありません。これはラオスでも同様です。
我が国は、戦後の高度経済成長下、1970年台と1990年代に2度の「交通戦争」を経験しました。そして、その後の半世紀に及ぶ息の長い対策や活動が功を奏し、今日では世界でも人口あたりの交通外傷死の数が最も少ない国の1つとなりました。今日の低中所得国が置かれている状況は戦後の日本ともまた異なりますが、それでも日本の交通外傷死の軽減を図ってきた経験と歴史には、学べる点は数多いと考えます。
そこで今回、私たちは、交通外傷死が増加の一途をとげるラオス首都ビエンチャンにおいて、交通外傷死の増加を食い止めるべく学際的な取組を実施します。そして、ラオスにおける救急医療体制の礎をラオス人と共に首都ビエンチャンにおいて築き上げたいと願っております。さらにラオスで得られた経験を他の開発途上国において展開する事で、そのインパクトの波及、英知の共有を目指して参ります。
【マネージャー】
鈴木 貴明 筑波大学医学医療系 救急・集中治療医学 客員研究員
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター附属久高診療所 医師
【副マネージャー】
西田 純二 株式会社社会システム総合研究所 代表取締役
【専門家】
井上 貴昭 筑波大学医学医療系 救急・集中治療医学 教授 (専門:救急医学)
市川 政雄 筑波大学医学医療系 国際社会医学 教授 (専門:国際保健)
大田 香織 株式会社社会システム総合研究所 大阪事務所長 (専門:社会実装)
上東 亜佑希 株式会社社会システム総合研究所 (専門:情報システム)
中村 俊之 名古屋大学未来社会創造機構 特任准教授 (専門:交通工学)
秋山 豊和 京都産業大学情報理工学部 教授 (専門:情報システム)
上善 恒雄 大阪電気通信大学総合情報学部 教授 (専門:情報システム)
曽根 悦子 国士舘大学防災・救急救助総合研究所 助教 (専門:病院前救護)
石崎 貴 国士舘大学防災・救急救助総合研究所 研究員 (専門:病院前救護)
高山 祐輔 帝京大学医療技術学部 講師 (専門:病院前救護)
乾 瑶子 早稲田たけのこクリニック 看護師 (専門:国際看護)
藤本 達也 フリーランス (専門:病院前救護)
【プロジェクト事務局】
上田 健翔 筑波大学附属病院国際部 事務職員
【SAFER現地連絡事務所】
吉田 哲朗 てっちゃんねっと・トレーニング・センター 代表
吉田 文華 てっちゃんねっと・トレーニング・センター 副代表
ワッサナー・セーンスリッデーット てっちゃんねっと・トレーニング・センター 秘書
ウィライポーン・ワンナシー てっちゃんねっと・トレーニング・センター 秘書補佐
ブアローイ・センティラット てっちゃんねっと・トレーニング・センター 秘書補佐
チャンシー・ウォンケオ てっちゃんねっと・トレーニング・センター 秘書補佐
国立大学法人筑波大学 筑波大学附属病院 国際部
〒305-8576 茨城県つくば市天久保2-1-1
世界中で使用されている救命救急のシンボルマークでもある「スターオブライフ」の中に、プロジェクト名でもある”SAFER”が記されています。
「スターオブライフ」の6つの頂点には、①覚知(Detection)、②通報(Reporting)、③出場(Response)、④現場手当(On Scene Care)、⑤搬送中手当(Care In Transit)、⑥医療機関への引渡し(Transfer to Definitive Care)の意味が込められており、これらの実現はSAFERプロジェクトにおける目標でもあります。
また”SAFER”の”A”には三角コーン、”E”は横断歩道を示しており、交通安全の重要性が説かれています。
ラオスの国旗は、赤・青・白が使用されています。ロゴにおいても同じ色を用いました。
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