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EMS支援システム導入

救急医療サービス(Emergency Medical Services)支援システム

ラオスでは、経済発展と自動車交通の増大にともない、交通事故の死傷者数は増加傾向にあります。交通事故で致命傷を負った患者は、病院へと運ばれることもなく、路上で亡くなっていくことも多いのが現実であり、10年前までは、ラオスでは路上死が「日常」でした。

現在、ラオスにおいては公的な救急搬送サービスこそありませんが、毎日繰り返される路上死に心を痛めた若者が立ち上がり、ボランティアによる救急搬送が開始されました。市民ボランティアで構成される民間の救急隊の活動は、ここ数年で首都ビエンチャンを中心に盛んになり、現在ビエンチャンの救急搬送を担っているのは、8つの救急隊です。彼らは、活動資金を寄付で賄いながら、不十分な資機材を駆使し、24時間体制で無償の救急搬送サービスを提供しています。しかし、救急隊の教育システムや搬送先医療機関との連携強化など、活動をより効率化、高度化させるための課題が累積しています。今回これらを解決すべくシステムを導入します。

また交通事故を減らすには、交通事故がどのような場所や状況において、どのようなけがを引き起こしているかを知ることが重要です。しかしながら、ラオスの交通事故に関して(発生場所・時間・状況など)情報が記録されておらず、けが人の記録は紙のまま保存され、事故データを分析できていない状況です。そこで、今後、救急隊の活動内容を記録し、そのデータを救急車から病院に事前伝送するシステムを導入する計画です。このデータを元に、教育・道路整備・交通違反の取り締まりに反映させ、交通事故の削減に活用していきます。

(救急車搭載のスマートフォンの操作)

※スマートフォンのタブレットで操作できるWebアプリケーションなので、日常的にスマートフォンを使用している救急隊員にとって操作は簡単です。

 

 

1.    事故の状況や救急隊活動の記録を電子化・データ分析

救急車の出動から現場到着、救命措置、病院到着まで、活動の流れに沿って操作することで、それぞれの時刻が記録されます。蓄積された活動記録のデータを分析し、交通事故を減らし救命救急活動の高度化を図ります。

レスキューが使用するESSスマートフォンアプリの画面

(レスキューが使用するESSスマートフォンアプリの画面)

 

 

2. 病院前情報を搬送先医療機関へと事前伝送

救急車内からけが人のデータを病院に伝送し、病院では設置されたモニターを見て、搬送されるけが人情報を確認します。複数名の患者が搬送される場合や、搬送される患者の症状に合わせて、事前に病院側の態勢を整えることで、人命救助の一助となります。

モニターには、病院に向かう救急車の位置と搬送される患者の情報が表示されます。患者情報にはけがの部位とその重症度が示され、重症度の高い患者には赤いラベルが付されることで、病院側は受け入れ態勢を事前に整えることが可能となります。

 

3.  街中の救急車の位置・出動可能状況、3中央病院の受入可能状況をモニタリング

ビエンチャン市のレスキュー5団体(1623、1624、1625、1628、1630)に配布するスマートフォンのGPS機能を活用し、救急車の位置情報を把握することができます。発車係(ディスパッチャー)が、位置情報をふまえ事故現場に最も近い車両に出動指示を出せるようになることを目指しています。将来的には、迅速・効率的に救急車を運用するための指令センターを設置する予定です。

また、3中央病院(ミタパープ病院、セタティラート病院、マホソット病院)が情報端末デバイスに適宜受入可能状況(受入可、受入不可など)を入力することで、救急車に出動指令を下す指令管制センター(CCC)ではひと目で各病院の受入可能状況が把握できることを目指します。

(CCCに表示される画面)

2017年、ビエンチャンレスキュー1623に、プロトタイプとして救急車の現在位置を測定するためのGPS装置を寄贈し、発車係(ディスパッチャー)が事故現場に最も近い車両に出動指示を出せるようになりました。

 

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