2008年(平成20年)に臨床工学部は医療機器管理センターとして発足後、2022年(令和4年)4月1日に臨床工学部に部門名が変わりました。臨床工学技士は高度化する医療を支えるための多種多様な医療機器の操作や管理を行い、安全で質の高い医療の提供に貢献しています。当院の医療機器は10029台(2024年6月現在)ありますが、その機器を一括管理しているのが臨床工学部です。特に高度で特殊性が高く管理能力が必要な生命維持管理装置(人工心肺関係、人工呼吸器、血液浄化装置、除細動装置、閉鎖式保育器)を39名の臨床工学技士が担当しています。生命維持管理装置とは、呼吸、循環、代謝を一時的あるいは恒久的に代行する装置です。これらの装置を安全に臨床技術提供するには時間を要し、入職して1年目から3部門(①手術室、②心臓カテーテル室、③血液浄化療法・救急集中治療室)を4ヶ月間のローテーションで4年間行います。その後、5年目から基礎的な知識や技術を習得するために各部門のスペシャリスト育成を目指し専任スタッフとして従事していきます。また、毎年必ず専属スタッフ全員に業務希望等のヒアリングを行い、各部門のバランスを考えた配置転換も行っております。
さらに、医療安全と質の向上のため毎月一回、「臨床工学部リスクマネージメント会議」を開催し、院内における医療機器の管理や定期研修・点検状況を「医療機器安全管理責任者」に報告するとともに、関連する医療材料についても協議し、機器の安全管理の改善に努めています。
また、当院は国立大学初のPFI事業を取り入れており、臨床工学部でもPFI事業の一環である外部委託のMEセンターと協働して医療機器の管理を行っています。臨床工学部に従事している臨床工学技士は生命維持管理装置に係わる機器を中心に臨床業務及び機器の保守管理を行い、その他一般医療機器についてはMEセンターが一括管理しております。医療機器の研修(新規購入医療機器、特定機能病院として求められている医療機器8機種、特定8機種の他の特に安全使用に際して技術が必要と考えられる医療機器等、レンタル機器、医療機器の無償貸出機器:6ヶ月間)についても、院内共通の「医療機器安全使用のための研修記録用紙」を用いて研修を行っており、受講後にはMEセンターに研修記録用紙を提出し、医療機器管理システムで職員の研修管理も行っております。
部長(医師) *病院教授 | 山本 純偉(医療機器安全管理責任者) | ||
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副部長/技士長 | 縮 恭一 | ||
副技士長(2名) | 名倉 正明、茂木 芳賢 | ||
主任(6名) | 赤星 博和、逆井 健一、坂元 雄介、鳥羽 清志郎、藤谷 亮太、 荒木 健太 |
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手術室部門 専属スタッフ(7名) |
茂木 芳賢 | 逆井 健一 | 藤谷 亮太 |
荒木 健太 | 今井 清太 | 澁谷 未来 | |
荒原 裕貴 | |||
心臓カテーテル部門 専属スタッフ(6名) |
縮 恭一 | 坂元 雄介 | 鳥羽 清志郎 |
森谷 忠生 | 三浦 健太朗 | 成塚 郁海 | |
高田 葉月 | |||
血液浄化・救急集中治療部門 専属スタッフ(8名) |
名倉 正明 | 赤星 博和 | 古垣 達也 |
河原 仁美 | 井坂 まい | 高瀬 弘樹 | |
ローテーションスタッフ(2年目~5年目) | |||
5年目~ | 石井 渉、大久保 龍、金桝 光希 | ||
4年目~ | 大澤 樹、坂井 彩華、七海 宣之 | ||
3年目~ | 石井 勇一、打越 拓弥、川﨑 真碧、見目 光、 程塚 美也、町山 敦史、峰尾 歩、若林 音嘉 |
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2年目 | 関根 陸翔、高木 誠琉、立木 里緒、千葉 勝仁 |
手術部で実施される小児先天性疾患・成人疾患、大血管疾患に対する人工心肺、手術室や集中治療室・救急外来で使用される経皮的心肺補助(ECMO)や大動脈内バルーンパンピング(IABP)、補助循環用ポンプカテーテル(IMPELLA)、小児/成人補助人工心臓(LVAD)の操作・管理を行っています。ハイブリッド手術室では経カテーテル的大動脈弁治療のTAVIや僧帽弁クリップ術(MitraClip)の清潔野補助業務、小児心臓カテーテル検査の補助を行い、多職種と連携して患者安全に努めています。
麻酔器や生体情報モニタ、自己血回収装置、体外式ペースメーカ、気管支ファイバーなどの手術関連機器や、内視鏡および顕微鏡・da Vinciと手術中の医療機器セットアップや迅速なトラブル対応を行い、円滑な手術部業務を行っています。
内視鏡センターでは上部消化管および下部消化管の検査および治療に使用する内視鏡光源装置、スコープ、高周波治療装置の点検・準備、切開ナイフや高周波スネアなどの治療用鉗子等の医療材料管理とセッティング・トラブル対応を行い、内視鏡検査/治療が円滑になるよう医師・看護師と連携を行っています。また、消化器内科で行うラジオ波焼灼療法(RFA)の機器操作および治療介助を行っています。
血液浄化とは「血液体外循環を用いて、血液中の病因(関連)物質を除去または不足している物質を補給する治療」です。当院の血液浄化療法室は、月曜日から土曜日まで毎日維持透析を行っていますが、特に月・水・金曜日は午前・午後の2クールで行い、手術・精査・加療目的で入院した患者さんの維持透析にも対応しております。また、月曜日から金曜日までは維持透析に加えて、血漿交換療法・血漿吸着療法・白血球除去療法・末梢血幹細胞採取業務にも対応し、血液浄化のスケジュールを組み立てやすくしました。集中治療領域においては、持続的血液濾過透析・エンドトキシン吸着・小児血液浄化など多岐にわたる治療を行っています。主な業務は、血液回路のプライミング・装置(個人用血液透析装置25台、アフェレシスモニタ7台・末梢血幹細胞採取モニタ1台)の操作・保守管理です。
血管造影室で放射線透視下にて検査及び治療を行っており、虚血性心疾患(カテーテルインターベンション)治療業務、不整脈治療(カテーテルアブレーション)業務、心臓植込み型デバイス業務を医師、看護師、放射線技師と協力しながら取り組んでおります。
虚血性心疾患・弁膜疾患・心筋症・先天性心疾患・構造的心疾患 [structural heart disease (SHD)]などの多くの循環器疾患に対してカテーテル検査・治療を行っております。臨床ではラボシステムやイメージングモダリティ(血管内超音波: IVUS、光干渉断層法: OCT、血管内視鏡: CAS)、ロータブレーター、ダイヤモンドバック、エキシマレーザー、緊急時においては補助循環装置(IABP、ECMO、IMPELLA)など多くの機器操作・管理を行っています。
不整脈カテーテルアブレーション領域の周辺機器は急速な進歩を遂げており、それに伴い臨床工学技士の治療への介入が進んでおります。心房細動や発作性上室頻拍、心室期外収縮、心室頻拍まで多くの不整脈電気生理検査及び治療に対して、臨床ではラボシステムで体表面心電図及び心腔内に配置した電極カテーテルから得られる心内心電図の解析、3Dマッピングシステムを用いた治療戦略のサポート、心臓電気刺激装置やアブレーション機器の操作を行っています。
植込みデバイス(ペースメーカ: PMI、植込み型除細動器:ICD、心臓細同期療法:CRT、植え込み型心臓モニタ:ICM)の手術時の立ち会い及び術後のフォローアップや病棟チェック、毎週金曜日の午後からデバイス外来(循環器内科、小児科)を行っております。さらに、外来・入院されているデバイス患者様の放射線治療、陽子線治療、内視鏡治療や核医学検査、心肺運動負荷試験検査(CPX)、CT撮影、CRTの心エコー調整や全診療科からの緊急時デバイスチェックにも対応しております。
近年、日本では高齢化社会や医師不足の社会問題に伴い遠隔診療・診察が推進されており、Webサイトを利用したデバイス遠隔モニタリングで致死性不整脈や電池消耗やデバイスのリード異常などの早期発見にも努めております。植込みデバイスに関するご質問や遠隔モニタリングの問い合わせは以下の通りです。
TEL:029-853-6200(内線番号:90801)のデバイス担当者までお電話ください。
人工呼吸器は、病気や手術、麻酔などで呼吸停止や減弱した患者様の換気を代行または、補助をする医療機器です。当院では15種類、83台(2023年5月現在、レンタル含む)の人工呼吸器を運用しています。機器貸出業務や使用前、使用後の作動点検のほか、患者様に装着中の人工呼吸器の動作を、病棟をラウンドして毎日チェックしております。また定期的に医師や看護師などの医療従事者向けに定期的および随時、人工呼吸器の講習会を行い、安全な診療のサポートに努めています。その他、成人・小児循環器疾患や重症呼吸不全の患者様に対し、一酸化窒素吸入療法、低酸素ガス吸入療法も行っています。
2010年より呼吸ケアチーム(RST:Respiratory Support Team)がスタートし、週1回のラウンドと月1回のミーティングを行っています。メンバーとして医師・歯科医師・歯科衛生士・看護師・理学療法士・臨床工学技士・事務職員が参加し、それぞれの専門知識を持ち寄ることでより安全で効率的な呼吸ケアの検討や院内研修を行っています。
当院では第1種装置(一人用)を用いた高気圧酸素治療を行っています。急性一酸化炭素中毒のような急性疾患や、難治性潰瘍、骨髄炎のような慢性疾患など、各種適応疾患に対応しております。臨床工学技士は医師や看護師との連携のもと、高気圧酸素治療装置の点検や操作、入退室の介助に携わっています。
除細動装置52台、AED43台、閉鎖式保育器(設置型19台、搬送型3台)、開放式保育器39台の管理及び、MEセンター(外部委託業者)との連携をとり、医療機器の管理・運用、医療機器安全情報の連絡等のマネージメントを行っています。また、臨床工学技士2名が臨床工学部の組織リスクマネージャーとして、院内の組織リスクマネージャー連絡会議に参加し、医療事故防止に取り組んでいます。 医療機器安全のための方策については、臨床医療管理部や他部局との連携により医療機器の運用の改善、院内外のインシデントに照らして医療機器の安全使用のための研修会を行い、ISOに則り医療の安全と質の向上を求めて改善を進めております。
2015年より、大学のロゴ入りの機器点検ステッカー(点検年月日・次回実施年月を表示)の標準化を導入し、点検済みの院内医療機器の安全管理の可視化を始めました。
機器の管理運営については、日本臨床工学技士会の指針を参考に行っております。
2)医療機器管理に関する報告書・指針
http://www.hosp.tsukuba.ac.jp/pfi/index1.html
MEセンターは臨床工学部管理下にあり、生命維持管理装置以外の共用機器(輸液ポンプ675台、シリンジポンプ411台、パルスオキシメーター28台、ベットサイドモニター19台、空気加圧式マッサージ器64台、離床センサー30台など)の中央管理を行なっており、病棟などからの依頼に対し機器の貸出返却業務を行なっています。機器返却後には動作確認等を実施、定期的に精度点検も実施しており、常に安全な機器の提供に努めています。また、医療機器コールセンター業務も行っており、院内全ての医療機器についての故障・不具合時の確認、簡易修理対応、機器の保守・点検記録、故障・修理報告等を一元管理し、機器の適切な管理にも努めています。
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