患者さん専用回線
029-853-7668(※本院は全科予約制です)

妊孕性(にんようせい)温存医療外来

疾患治療前に行う妊孕性(にんようせい)温存医療のご案内

筑波大学附属病院では、疾患治療前に行う妊孕性温存医療(精子凍結保存・卵子凍結保存・胚凍結保存)を実施しています。

特に近年は、がん患者さんを対象とした妊孕性温存医療に力を入れています。日本癌治療学会で作成された「小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン」2017年版 に沿い、がん治療と妊孕性温存の狭間で悩む患者さんの力になれるよう努力しています。
がんの治療を最優先としながら、患者さんへの適切な情報提供やがん治療医との綿密な連携を大切にし、患者さんお一人お一人の思いに寄り添う医療を提供いたします。

1.がん患者の妊孕性温存とは

がん治療の進歩により、多くのがん患者さんが病気を克服できるようになりました。
妊孕性温存とは、抗がん剤や放射線などのがん治療によって生殖機能の低下を来す前に、妊娠する力を保存しておく方法です。そして、がん治療が一段落したときに不妊治療を行い、子どもを産み育んでいきます。
妊孕性温存は、男性にも女性にも関わる大切なことです。抗がん剤の種類や放射線の照射部位によって、どれくらい妊孕性が低下するかは異なります。また、年齢、がん治療までの期間、病状などによって、妊孕性温存の可能性は異なります。
子どもを持つという人生の重要な選択肢について、がん治療を行う患者さんと共に考えていくことを私たちは大切にしています。
妊孕性温存の詳細については、以下のリーフレットをご覧下さい(両面に印刷の上、二つ折りにしてご利用ください)。

「知っておきたい精子凍結保存の知識」
「知っておきたい卵子・受精卵凍結の知識」



図1:がん患者の妊孕性温存のスケジュールイメージ



2.男性患者さんの疾患治療前に行う妊孕性温存

対象となる方:
がんや膠原病などの疾患に対する治療により精巣機能障害を来たし、将来的に無精子症に至るリスクを有する患者さん


表1:男性がん患者の妊孕性温存法 ※筑波大独自に作成
  精子凍結 TESE 精巣内精子採取術 精巣組織凍結
対象疾患 精巣腫瘍、脳腫瘍、白血病、リンパ腫、消化器がんなど。
凍結精子を用いたパートナー女性の不妊治療の際には男性患者本人の同意が必要
左記のうち、充分な射出精子が得られない方、射精自体が困難な方 小児がん
対象年齢 思春期相当~青壮年 パートナーとなる女性の年齢により40歳以上でも対象となる 小児~青壮年 小児
婚姻
問わない
受診から凍結保存までの
期間
1日(初診日のカウンセリング、同意書受諾ののち、同日に精子凍結保存が可能) 数日~1週間程度
(入院が必要)
1~2週間程度
特徴、問題点 精通していない小児では困難
1回で充分な精子が回収できるとは限らない
手術が必要であり侵襲を伴う。手術によりがん治療が遅れる可能性がある
手術をしても充分な精子が回収できるとは限らない
精巣が未熟な小児は対象にならない
精巣が未熟な小児を対象とした研究段階の医療であり、この技術をヒトに応用して妊娠に至った例は2020年現在報告されていない。
手術が必要であり侵襲を伴う
本院での対応 実施中 応相談 研究段階であり、本院では行っておりません。

がんの治療後であっても、精巣機能検査やカウンセリングを行うなど、妊孕性に関するご相談への対応をいたします。可能な限り、治療回数が少ない時期にご相談下さい。


筑波大学附属病院 泌尿器科 古城公佑/根来宏光/西山博之


3.女性患者さんの疾患治療前に行う妊孕性温存

対象となる方:
がんや膠原病などの疾患に対する治療により卵巣機能障害を来たし、将来的に早発閉経に至るリスクを有する患者さん(対象年齢や、可能となる妊孕性温存治療については、下記表をご覧下さい。)


表2:女性がん患者の妊孕性温存法
※日本癌治療学会編:小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン2017年版(金原出版)P27を参考に作成
  胚(受精卵)凍結 未受精卵子凍結 卵巣組織凍結
対象疾患 白血病、乳がん、リンパ腫、消化器がん、悪性黒色腫、胚細胞腫瘍、脳腫瘍、肉腫など 乳がん、リンパ腫など
対象年齢 初経後~45歳未満 胚移植は50歳未満 (本院の場合) 16歳~40歳程度まで 0~40歳程度まで
婚姻 既婚または事実婚 未婚の方中心 未婚、既婚
受診から凍結保存までの
期間
2~8週間 2~8週間 1~2週間
特徴、問題点 胚あたり妊娠率 30~35%
(年齢により異なる)
卵子あたり妊娠率4.5~12%
(年齢により異なる)
多量の卵母細胞を凍結できる。
凍結した卵巣内に微小ながん細胞の残存病変を含む可能性。
卵胞の生着効率が悪い
本院での対応 実施中 実施中 研究段階の治療。現在本院では行っておりません。
情報提供ののち、他院にご紹介いたします。

凍結保存までの手順:

排卵誘発(2-3週間連日排卵誘発注射または内服、数日おきに来院)
→ 入院(原則、前日から2日間入院となります。合併症疾患の管理が必要な場合には数日前から入院となる場合もあります。)
→ 未受精卵子凍結保存の場合:採卵当日に凍結保存完了
→ 胚(受精卵)凍結の場合:排卵後2-6日間で凍結保存完了
凍結完了数日後に採卵の合併症がないかどうかを確認するため、来院をお願いすることもあります。

筑波大学附属病院 産科・婦人科 川崎彰子/板垣博也/佐藤豊実



4.妊孕性温存に関する診療科

男性の妊孕性温存
外来診療日:木曜 午前
泌尿器科 担当医:古城(こじょう)公佑・根来(ねごろ)宏光


女性の妊孕性温存
外来診療日:月・火・木曜 午前
産科・婦人科 担当医:川崎 彰子・井尻 博子・板垣 博也


がん生殖医療外来は、以上を原則としますが、緊急性の高いときには柔軟に対応いたします。



5.妊孕性温存を希望する方の受診の流れ

■本院でがん治療をされている患者さん
1.患者さんは妊孕性温存を希望する場合、「妊孕性温存外来」を受診したい旨を主治医にお伝えください。
  がん治療の主治医が妊孕性温存の適正判断をします。
2.主治医の方は、本院電子カルテ内 “原疾患主治医から生殖医への情報提供書” を記載のうえ、妊孕性温存
  担当医にコンサルテーションを行ってください。原則として、妊孕性温存担当医に直接ご連絡ください。
  特に治療開始までの期間が短い場合(男性:1週間未満、女性1か月未満)や、1週間以内の受診が難しい
  場合には必ず連絡してください。
3.患者さんは、外来予約日に初診受付機で受付を済ませてください。
  該当する外来(男性は260外来、女性は250外来)で診察を行います。
4.パートナー(ご夫婦など)がいらっしゃる場合は、ご一緒の受診をお勧めいたします。

主治医からの情報提供書式

■他院でがん治療をされている患者さん
1.患者さんは妊孕性温存を希望する場合、「妊孕性温存外来」を受診したい旨を主治医にお伝えください。
  がん治療の主治医が妊孕性温存の適正判断をします。
2.かかりつけ医師の方は、ホームページ上の “妊孕性温存を希望する外来紹介患者情報提供用紙”(下記)を
  記載のうえ、筑波大学医療連携患者相談センターにFAXでお申し込み下さい。
  がん治療までの期間が短い(男性:1週間未満、女性:1ヶ月未満)等の場合は、まずは筑波大学病院総合
  がん診療センター生殖医療部門までお問い合わせ下さい。
3.パートナー(ご夫婦など)がいらっしゃる場合は、ご一緒の受診をお勧めいたします。

☆妊孕性温存を希望する外来紹介患者情報提供用紙
   男性用 女性用

※がん治療を担当する医師の方へ
 患者へ情報提供する内容、受診の際の診療情報提供の内容、適正判断等に迷う場合は、
 ご遠慮なく担当医師までご連絡ください。



6.費用

妊孕性温存にかかる費用は、以下の通りです。

<精子凍結保存>
凍結開始時:50,000円(消費税別)(1年間維持管理費を含む)
保存更新時:20,000円(消費税別)(1年間維持管理費を含む)
融解費(1回):5,000円(消費税別)

<胚凍結保存>
採卵から凍結保存まで:30万円から40万円程度(1年間維持管理費を含む)
 *凍結する卵の個数により価格は異なります
 *採卵を行う前の排卵誘発などにかかる費用は別途発生します
保存更新時:20,000円(消費税別)(1年間維持管理費を含む)
凍結融解胚移植:70,000円(消費税別)
 *移植前のホルモン補充療法などにかかる費用は別途発生します
がん生殖医療外来では5000円/30分(消費税別)の相談料が発生する場合があります。

茨城結婚・子育てポータルサイト 茨城県不妊治療助成事業



7.その他

妊孕性温存について、もっと詳しくお知りになりたい方は、こちらもご覧下さい。

日本がん・生殖医療学会HP
国立がん研究センター がん情報サービス「妊孕性」
日本癌治療学会 癌診療ガイドライン「妊孕性温存」
本ガイドラインの利用方法ページ



8.問い合わせ先

筑波大学附属病院総合がん診療センター生殖医療部門 TEL:029-853-8096




近郊の筑波学園病院でも精子凍結保存と胚凍結保存を実施しています。
ご希望の方を筑波学園病院に紹介することも可能です。

筑波学園病院に関する詳しい情報はこちらから



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