メッセージ    MESSAGE

脳卒中の予防・治療・予後の
改善にトータルで挑む
松丸 祐司

筑波大学附属病院茨城県脳卒中・心臓病等
総合支援センター センター副部長
筑波大学附属病院 脳卒中科
筑波大学 医学医療系 脳神経外科 脳卒中予防・治療学 教授

脳卒中治療の
エキスパートチームを結成

私は医師になってから30年、一貫して脳卒中の治療に力を注いできました。当時、脳卒中でのカテーテル治療は始まったばかりでまだまだ荒削りだったものの、「この治療法には未来がある。多くの患者さんのために発展させたい」と考えたのが私の原点です。

それまで脳卒中の治療といえば、内科・外科がそれぞれ別々に診療にあたることが日本では常識でしたが、2016年に母校である筑波大学附属病院に戻るタイミングで、外科と内科が一緒になって治療にあたる「脳卒中科」を作りました。脳卒中科そのものは他にもありましたが、外科と内科が混合で一つの科になるのは前例のないことでした。

ちょうど救急科の医師たちが従来と比べて救急診療へ積極的に取り組むようになったことも重なり、脳卒中の患者さんの受け入れが大きく増えました。脳卒中専門の集中治療室であるストローク・ケア・ユニット(SCU)のおかげで、多くの患者さんの予後もよくなりました。

小学校の授業を通じた
啓発活動にも注力

茨城県は、脳卒中の患者数が多く、全国でもワースト上位の常連となっています。その理由のひとつが、味の濃い食事を好むことに起因する高血圧であることは間違いありません。ただ、私たちがみなさまに向け「喫煙をやめ、塩分摂取量を減らしてほしい」と訴えても、なかなかメッセージは届かないものです。

そこで、数年前から新たな試みとして神栖市内の各小学校で、児童のみなさんに向けて塩分を控える大切さを伝える授業「ブレインレスキュー神栖プロジェクト」を始めました。「今日学んだことを両親や祖父母のみなさんにも、ぜひ話してみてほしい」と伝えたところ、子どもたちだけでなく親や祖父母世代の意識にも目に見えて変化が現れ始めたのです。

まだ小さな活動であり、「脳卒中患者が減る」という明確な成果につながるのは数十年先かもしれません。本来「脳の手術が必要な状態になりたい」と考える方は誰一人いないのです。適切な知識を届けて、少しでも脳卒中を発症する方を減らしていくための啓発活動も私たちの大切な役目だと思っています。

「予防・治療・予後」トータルの
改善へ向けた連携

「脳卒中・心臓病等総合支援センター」の発足によって、さらに緊密な医療連携を実現したい、筑波大学附属病院としても中心的な役割を担いたいと考えています。先ほどお話しした小学校での啓発授業も、一部地域だけでなく茨城県内全域へ広げたいという希望があります。

脳卒中の治療が必要な患者さんが、県内どこでも高度かつ適切な医療が受けられるように医療機関に対しても研修や情報提供を行います。また再発の可能性が高い脳卒中で重要なのは、リハビリテーションとその後の生活改善です。診療所、訪問看護ステーション、介護事業者などと連携して、できるだけ長く健康な生活を送れる方が増えるように努力します。

松丸 祐司

筑波大学附属病院茨城県脳卒中・心臓病等総合支援センター センター副部長
筑波大学附属病院 脳卒中科
筑波大学 医学医療系 脳神経外科 脳卒中予防・治療学 教授

出身
筑波大学医学専門学群卒業

経歴
日本脳神経血管内治療学会事務局長・理事・指導医・専門医
日本脳神経外科学会専門医
日本脳卒中学会専門医・評議員
日本脳卒中の外科学会代議員
医学博士(筑波大学)
International Master Degree in Neurovascular diseases sponsored by Paris Sud University (France) and Mahidol University (Thailand)

専門分野
脳卒中、脳および脊髄血管疾患に対する血管内治療

筑波大学 筑波大学附属病院
〒305-8576
茨城県つくば市天久保2丁目1番地1
Tel. 029-853-3900(代表)