メッセージ    MESSAGE

スペシャリストの連携によって
「脳と心臓」を守る
早川 幹人

筑波大学附属病院茨城県脳卒中・心臓病等
総合支援センター 委員
筑波大学附属病院 脳卒中科
筑波大学 医学医療系 神経内科 講師

石津 智子

筑波大学附属病院茨城県脳卒中・心臓病等
総合支援センター センター副部長
筑波大学附属病院 循環器内科
筑波大学 医学医療系 循環器内科 准教授

医療の進歩で
重篤な疾患も治せるように

--石津先生は心臓病を専門にしていらっしゃいます。特に生まれつき心臓病のある方を多く診てこられたのですね。

石津
年齢を重ねてから心臓を患う方がいる一方で、生まれつきの心臓病である「先天性心臓病」は100人に1人の割合で起こります。これといった治療法のなかった40年前は、多くの方が成人される前に亡くなられていましたが、手術方法が発達した今は成人を迎え、社会に出て就職する方も多くなりました。

ただ大人になってからも、定期的な通院や治療が欠かせませんが、大人になった先天性心臓病の患者さんを専門に診る医療機関が県内のどこにもありませんでした。 筑波大学では2010年、茨城県で初めてとなる「成人先天性心血管疾患専門外来」を設置し、私もこうした心臓に心配のある患者さんの力になりたいと、これまで取り組んできた心不全、弁膜症などの診療に加え、先天性心臓病の成人診療に取り組んできました。

--早川先生はどうして脳卒中を専門に選ばれたのでしょうか。

早川
若手のときに当直勤務をしているとさまざまな疾患を担当することになります。そのなかで特に難しいと感じたのが脳卒中で、時として専門家でも見落すほど発見が難しいことがあり、かつ取り返しのつかないことになる疾患です。「早くから治療できていれば助かったのに」というケースを少しでも減らせるように、自分自身が研鑽を積みたいと考えたのが神経内科を専門に選んだきっかけです。

この10年ほどで、カテーテルを使った血管内治療の技術が劇的に進歩したため、脳梗塞の原因となる血栓を血管から取り出せるようになりました。治療による傷が小さく、後遺症や再発の可能性を減らせるのもメリットです。

石津
早川先生の診断力は本当に頼りになります。先日も、一般内科から心臓病の治療のために紹介されたある患者さんがいらっしゃいました。私たちも心臓治療の計画を立てていたのですが、早川先生は「これは心臓病ではなく血管の病気で、脳卒中のリスクが高い」と瞬時に見抜いたんですね。筑波大学附属病院に紹介されたからこそ、このようにスペシャリストの知見が活かされたのだと思います。

密接な関係がある脳と心臓

--「脳卒中の原因が実は心臓にあった」という事例があるのですね。一般の方は「脳と心臓」がそこまで関連しているとは知らないと思います。

早川
脳卒中は、脳そのものというよりも脳の血管の病気です。血管でつながっている心臓とは共通の原因から発症する病気も多いのです。心臓の病気によって脳に影響が出ることもあります。だからこそ脳と心臓を両面からケアすることは大切ですね。

石津
たとえば、70代のうち8人に1人は「心房細動」とよばれる不整脈が起こります。これは心臓の中に血栓ができやすくなるので、脳卒中のリスクが高まります。特に一度脳卒中を患った人は再発リスクが高いのです。このように脳だけ、心臓だけの専門家だけではなく、複数の専門家が連携しチームをつくって診ることによって、その後の生活を守ることにもつながります。

県民への啓発と医療者全体の
さらなるレベルアップが急務

--当センターには、あまねく県内各地に情報を届けるという役割もあるとお聞きしました。

石津
脳や心臓の病気になるにはさまざまな要因がありますが、特に日頃から高血圧と心房細動には気をつけていただきたいと思っています。少しでも気になるところがあれば、放っておかず、かかりつけ医に相談してください。当センターでは今後、茨城県の脳卒中と心臓病の診療について情報発信をしてまいりますので、ぜひホームページをご覧いただきたいと思います。

早川
冒頭でもお話ししたように、脳卒中は専門家でさえも見抜くのが困難な場合がある病気ですが、一方で、専門でない医療スタッフが診療や普段の生活のサポートにかかわるケースが多くあります。そのため、県内の病院・クリニックや在宅医療や訪問看護ステーションなどで働く医療スタッフにも、より高度な知識を学んでいただく必要があると思っています。

脳卒中の初期対応や入院診療の向上を目的とした研修会をシリーズで開催したほか、医療スタッフ向けの動画講座もこのホームページで定期的に配信しています。さらなるレベルアップしなければ、救える命が救えなくなってしまうという危機感があります。

石津
医療技術の発達によって、脳も心臓も以前は治療できなかったものがだいぶ変わってきました。脳卒中や心臓病は普通に暮らしている方が、ある日突然になりうる病気だということも、多くの場合は予防できることも、もっと私たちが中心となって発信していく必要があるという使命感を持っています。



石津 智子

筑波大学附属病院茨城県脳卒中・心臓病等総合支援センター センター副部長
筑波大学附属病院 循環器内科
筑波大学 医学医療系 循環器内科 准教授

日本循環器学会循環器専門医
日本内科学会認定内科医
日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本超音波医学会超音波専門医・認定指導医
日本臨床検査医学認定医
日本成人先天性心疾患専門医
日本心エコー図専門医

専門分野
心血管超音波医学、先天性心疾患、女性循環器疾患、心不全、弁膜症

早川 幹人

筑波大学附属病院茨城県脳卒中・心臓病等総合支援センター 委員
筑波大学附属病院 脳卒中科
筑波大学 医学医療系 神経内科 講師

日本内科学会総合内科専門医
日本神経学会神経内科専門医・指導医
日本脳卒中学会脳卒中専門医・指導医
日本脳神経血管内治療学会専門医・指導医

専門分野
脳卒中学、脳血管内治療学

筑波大学 筑波大学附属病院
〒305-8576
茨城県つくば市天久保2丁目1番地1
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