メッセージ    MESSAGE

“県内唯一” の誇りで
県民の健康を守る
原 晃

筑波大学附属病院 病院長
筑波大学 理事・副学長

マグネットホスピタルとして
着実に進化する

病院長を拝命した2018年から、一貫して「マグネットホスピタル」を目標に掲げてきました。マグネットホスピタルとは磁石のように、患者さんや働く職員たちを惹きつけて離さないほど魅力のある病院という意味です。

病院長に就任した当時は、病院の財政健全化を図るため、医療機器の新規購入やスタッフの増員を抑えていました。しかし投資を削った結果として、急性期を担う病院としての機能低下が課題にもなっていたのです。本来、医師や看護師をはじめ現場は「よい医療を提供したい」と願うのは当然のことです。そこで手術室を増やしたほか、人員採用も増やし積極的な変革を実行しました。

新型コロナの流行によって、全国各地の病院で患者数が減り経営的に苦しくなったのは広く知られていることと思います。当院も常に中等症以上のコロナ患者さんを受け入れるなどしたため、本来なら減らしたベッド数以上に患者さんが減るはずですが、実際には当院の患者数はコロナ流行後も増え続けました。

これは当院の感染症科がいち早く徹底した感染対策を実施したことなど、様々な要因があると思いますが、これまで以上に多くの患者さんに頼っていただいた事実は病院に関わる者として誇ってよいことではないでしょうか。

今後は高度な技能をもった認定看護師の取得増をはじめ、医療スタッフの一人ひとりがさらなるスキルアップや知識の習得につとめるよう推進してまいります。その結果として、さらに多くの患者さんに必要とされる真のマグネットホスピタルを実現できると考えております。

特定機能病院として
県全体を担う矜持

2020年には、県内で初めて「高度救命救急センター」に茨城県から指定されました。県内には6つの救命救急センターがあり、これらで広大な県内をカバーしていますが、こうした通常の救命救急センターでは対応が難しいケースも多くあります。「高度救命救急センター」は、国の基準に定められた指肢切断や急性中毒などの重篤な救急患者さんにも24時間体制で対応するものです。

また当院は、全国に88病院ある特定機能病院のうち、茨城県内では唯一の存在です。だから、この特定機能病院でしかできないような治療を必要とする救急患者を救うのが目的であり、一層、県全体の医療を牽引しなくてはならないという気持ちで、日々取り組んでいます。

さらに、このたび「筑波大学附属病院茨城県脳卒中・心臓病等総合支援センター」が設立されました。厚生労働省に選ばれたのは当院を含めて全国12病院しかありません。当院でも脳卒中と心臓を中心とした循環器の治療件数は非常に増えており、この分野においても県の医療をリードする立場を自覚しなければならないと考えております。

しかし、茨城県は従来から医師不足と言われる状況が続いていて、特に県北部では医師数や病床数も少なく、救急時の搬送時間も全国平均を大きく超過する厳しい状況です。短期での解消は難しく、また当院だけで取り組める問題ではありません。今後もさらに少子高齢化が進行し、働き方改革などへの対応も必要な中、茨城県や関連する諸団体と連携しながら安心な医療の提供へ取り組んでまいります。

今後は相談支援や
予防啓発なども重要な役割に

かつて脳卒中での死亡率が全国ワーストだった秋田県では、漬物が多く食べられており、しかもその塩味が濃いことに着目しました。食生活の改善指導を行う全県的な運動を通して、減塩を果たした結果、脳卒中患者を減らしたという経緯があります。

たしかに私も東北で暮らしていたときは「味が濃いな」と思ったものですが、茨城県はそれ以上に濃い味が好まれます。筑波での生活が30年を超えた今でも、料理や弁当の味付けの濃さには驚くことがあるほどです。秋田の漬物は、当時と比べればだいぶ塩分を減らしているようです。つまり食習慣、生活環境は変えられるのです。

少しでも県民の病気を減らし、健やかな生活を送っていただくことが私たちの願いです。それには県民のみなさま一人ひとりの目をどうやって生活改善に向けていただくかが重要であり、当センターが担える役割は決して小さくないと思います。医療相談としての広く県民のみなさまの窓口となり、正しい情報を伝えて生活習慣の改善を促していきます。

そして、いざというときには県内随一の機器と設備、高いスキルを有したエキスパートが診療にあたります。治療後は、リハビリテーションや再発の予防にも包括的に取り組むことで、県民のみなさまが長く健康で暮らせるように貢献できるでしょう。

患者さんの支援体制を充実させるところから、県内ひいては日本の脳卒中や心臓病対策の中心となれるよう、努力を続けてまいります。

原 晃

筑波大学附属病院 病院長
筑波大学 理事・副学長

出身
1979年 東北大学医学部医学科 卒業

経歴
2002年 筑波大学臨床医学系 教授
2012年 筑波大学医学医療系 医学群長
2015年 筑波大学医学医療系長
2018年 筑波大学 理事・副学長、附属病院長

筑波大学 筑波大学附属病院
〒305-8576
茨城県つくば市天久保2丁目1番地1
Tel. 029-853-3900(代表)