研修の実際 ノンテクニカルスキル研修

※お知らせ
2018年7月17日 (火) に新しい Web サイトを公開しました:

  医療者のための「つくばノンテク道場」
  https://www.hosp.tsukuba.ac.jp/nontech/

今後は上記のサイトをご覧ください。


ノンテクニカルスキル養成プログラム 筑波大学が独自開発!地域医療のリーダーとして必要な組織人としての能力を高める教育を実践

総合診療医養成に特化した教育ツールを開発して次世代のリーダーに必要な能力を養成

本プログラムでは、総合診療医が地域において、指導的役割を担う「リーダー」として高い成果を生み出すために必要な、コンピテンシーを分析。そのために必要なノンテクニカルスキルをもれなく養成できる教育プログラムを独自に開発し、実施しています。ノンテクニカルスキル養成研修は、専攻医から総合診療専門医取得後の医師まで幅広く参加を奨励しており、年齢、職種、勤務先も様々なメンバーに向けて毎年行われています。地域基盤型高度実践看護師養成プログラムの教員や院生、筑波大学附属病院の教職員など、多職種の参加者が集い、年にのべ約10日間、土日を利用して開催されます。Off the Job Trainingとしての効果を高めるため、各回でのふりかえりや、経験の共有を丁寧に行います。

医学教育であまり取り上げられていない組織力を向上させるためのノウハウを組み込む

複雑な組織と人間関係、種々の環境への対応が求められる総合診療領域では、医師自身が広い「考え方」の幅を持ち、様々な思考ツールを使って事象に対応できる具体的行動力をもっていることが必要です。必要なスキルはわかっていても、それを修得するためのトレーニングの方略が明らかになっていなければ、それは絵に描いた餅になってしまいます。本プログラムでは、産業界やビジネス界など医療界以外からもノウハウを学ぶことで、組織力を向上させるためのスキルと、それらを活用するマインドを醸成できるプログラムを実践しています。超高齢化が進み、医療が高度複雑化する一方で、十分な人的・物的資源が期待できない中でも、地域の医療崩壊を防ぎ、地域住民の健康を守っていこうと「本気で」思う総合診療医の、一生の財産になる能力の養成を目指します。

2015年度開催ノンテクニカルスキルトレーニングプログラムとその内容
自己理解 リーダーシップ
&
チームビルディング
ミーティング
ファシリテーション
TEAMS-BI
(仕事の教え方)
ユングのタイプ論をもとにして開発されたMBTI(Myers-Briggs Type Indicator)の自己分析メソッドを活用。自分に対する理解を客観的に深めていきながら、自分の強みや弱みを認識し、自分の持ち味を組織で発揮していくヒントを得ます。 自己理解を深め、自分の強み・魅力をベースとしたリーダーシップスタイルを見出します。チームの成り立ちについて理解を深め、効果的なチームマネジメントをしていくためのポイントを体感的に理解します。 医療チームにおけるミーティングを活性化させ、医療の質と効率を向上させるための、会議ファシリテーションの実践的スキルを学びます。 正確・安全・良心的に仕事をできるように速く覚えさせるために、業務内容を言語化し決まったメソッドに従った合理的な手順で教えることを学びます。後進や医療チームのメンバーの日々の指導に生かすことを目指します。
コンフリクトマネジメント
&
交渉術
問題解決力トレーニング 人材育成&コーチング TEAMS-BP
(業務の改善の仕方)
チーム医療における意見の葛藤や対立を「チャンス」ととらえ、うまく扱うためのさまざまなアプローチを学びます。また、協調的アプローチで合意形成していくための交渉術の基本概念を用いて学習することで、医療現場でコンフリクトを冷静に扱い合意形成を導くことを目指します。 問題解決の基本ステップを学び、それを丁寧に踏むことを体験するとともに、「システム思考」の考え方を用いて、実際に医療現場で起きている難しい問題の解決に取り組みます。状況を俯瞰的・長期的視野で把握し、問題の種類により解決への基本戦略を立て、使い分けることを学びます。 部下の成長を促し積極性を引き出す、聴き方/質問/承認など、現場ですぐに活用できるコーチングスキルをロールプレイ中心に学びます。基本的なエンパワメントの方法を知ることにより、後輩や部下の自発的な成長を促し教育効果を高める能力を身に付けます。 業務内容を細分化・簡素化し、順序を変えたり、組合せを工夫したりして、効率的・効果的に改善する方法を修得します。作業分解シートを用いて日常の業務をふりかえり改善する演習を通して、チームで協力して行う業務改善も体験します。
筑波が開発した「TEAMS」で「場を向上させる」総合診療医を養成

TEAMS(Training for Effective and Efficient Action in Medical Service)とは、医療サービスにおける作業の効率化を図る方法、合理的な考え方を体得する方法を学習して、患者に質の高い安全な医療を提供するとともに、職員がやりがいをもって働ける環境を作り上げることを目的としています。産業界で行われているTWI研修(Training Within Industry:職場教育(企業内教育)の手法のひとつ)を、筑波大学附属病院が日本の医療者用に改変したものです。

筑波大学では、以前文部科学省に採択されたGP(下記)において、TEAMSを日本の医療現場に適合するものに置き換え、組織人として必須の「仕事の教え方」や「業務の改善の仕方」「人への接し方」(以下表)について独自の教育パッケージを開発しました。専用カードとシートを用い、合理的な方法で、間違いなく実践できるようにトレーニング。日本の医療者が業務を効率的に、かつ安全に行うよう教育するための非常に有用なツールとなっています。研修は少人数体験型で行われ、休日を利用してコンパクトに学べるようにしています。確実に実践へとつながるTEAMSセッションを経て、専攻医は人に教え、業務を改善し、人と人との間の問題を取り扱うスキルを駆使できるようになり、次世代のリーダーとしての役割を担える人材に成長します。ノンテクニカルスキル研修と臨床における医学実践研修がバランス良く体系化され並行して行われる構造は、本プログラム最大の特徴といえます。

TEAMSの3テーマ
分類 内容
TEAMS-BI
(Better Instruction)
仕事の教え方 仕事を正確に、迅速に、安全に教えるための指導方法の修得
TEAMS-BP
(Better Process)
業務改善のしかた 仕事の方法・手順・施設などの改善ができる手法の修得
TEAMS-BR
(Better Relations)
人との接し方 職場の人間関係をよくするための問題処理のしかたの修得

「TEAMS-BI 仕事の教え方」セッションの様子

セッションの様子

参加者の声

身近な2 つの作業例を通じて、作業の説明はできるだけ細かく作業分解してから教えることが大事だと実感しました。また、教わる側の緊張をほぐしたり、できていることを「できている」としっかり伝えることは、教育の上で大事だなと思いました。

日常診療で研修医や学生、他職種に作業手順を教える機会はたくさんあります。「教え方」に直結するエッセンスをたくさん得られました。

多職種で楽しく真剣に学ぶこれまでのGP事業で開発した教育パッケージを継続・発展しています。

本事業では、多職種が共に学べるノンテクニカルスキル研修プログラムを実施しています。これは、平成23年に文科省補助事業に採択された「患者中心の医療を実践する人材養成」事業で開始した、チーム医療を実践できる人材養成のための教育パッケージを、継続・発展させたものです。これらの研修は、多忙な医療現場では十分に意見交換ができない他職種の考え方・感じ方を知る機会にもなっており、職種間の相互理解や新たな人脈作りにもつながっています。医療チームのパフォーマンス向上を目指し、楽しく、そして真剣に学ぶ研修が実施されています。

これまでのGP事業で開発した教育パッケージ

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