育成プログラム 総合診療医対象

ヘルスプロモーション コース

1.コースの概要

勤務する地域などにおいて持続的なヘルスプロモーションの仕組み作りを企画・運用できる能力を修得するために、系統講義により専門的知識を学習するとともに、自らが勤務する医療機関のフィールドでの実践式の問題解決型実習として、地域住民に対するヘルスプロモーションを実践します。

2.学習目標
3.学習の進め方

本プログラムは、講義室で行われる系統講義を通した理論的な学習と、受講者自らが勤務している医療機関とその地域のコミュニティーを対象に、系統講義で学んだ内容を実際のフィールドに適応・応用してゆく実践式の問題解決型実習との双方が用意されています。講義室と地域との往復を繰り返し行いながら学習を進めてゆきます。

4.教科書

下記の教科書を組み合わせて用いる予定ですが、詳しくはオリエンテーションで説明を行います。

5.評価

コースの2/3以上の講義とすべての演習・地域研修に出席し、かつ指導教員による観察記録で一定以上の評価を得ていること。ただし、欠席した講義に関しては、e-learinig で補完することを必須とする。試験に合格すること(ポートフォリオならびに健康教室等のビデオ記録を用いた実技試験、ピア評価および360 度評価(地域のステークホルダーからの自由記載なども含めたアンケートも含む))。中間報告会の内容に基づく形成的評価を年2 回(8 月、12 月)実施した後、最終報告会による総括的評価を行う(3 月)。上記により総合的な評価を行います。

6.講義項目と時間割
科目名 時間数 内容
ヘルス
プロモーション概論
時間:0.5時間×1回 時期:前期(4 月) 目的 ヘルスプロモーションの概念について、特に住民教育実践に関する部分の基礎的な理論を学ぶ
内容 ・ヘルスプロモーションとは
・ヘルスプロモーションに関するバンコク憲章
健康な公共政策づくり、健康を支援する環境づくり、地域活動の強化、個人技術の開発、ヘルスサービスの方向転換
進め方 レクチャー方式、ディスカッション方式で学ぶ
健康教育テーマ学習
(総論)
時間:45分×6 テーマ 時期:前期(4 月) 目的 それぞれのテーマについて、現行の健康教育コンテンツをダイジェストで紹介し、教育意図と教育ポイントを理解する
内容 栄養・運動指導(成人)、食育(小学生)、離乳食指導、喫煙予防教育(小学生、中・高校生)、介護予防、等
進め方 レクチャー方式、及びワークショップ方式で学ぶ
テーマ別健康教育
企画演習
時間:1.5時間×7回×6テーマ 時期:後期(7 月~2 月中旬) 目的 現代社会において、特に問題となっている健康問題について、各テーマごとに現状と課題について理解し、住民教育向けコンテンツ開発を行う
内容 栄養・運動指導(成人)、食育(小学生)、離乳食指導、喫煙予防教育(小学生、中・高校生)、介護予防、等
進め方 レクチャー方式、及びワークショップ方式および、各テーマに分かれてクループ学習を行う(90 分×7 コマ)
地域診断 時間:2時間×6回 時期:前期(4月~7月) 目的 介入地域における健康問題の同定を行い、介入時に必要となるステークホルダーの発掘方法などについて学ぶ
内容 現状評価、ニーズアセスメント、地域のリソースの活用など
進め方 レクチャー方式、及びワークショップ方式および、フィールドワークで学ぶ。保健師、看護師など地域の医療関係者へのインタビュー健康関連統計データの入手と分析。指導教員とのディスカッションを通して、深める。
ヘルス
コミュニケーション
時間:1.5時間×3回 時期:前期(4月~7月) 目的 地域における健康教育介入を行う際に効果的なアプローチの手法を学ぶ
内容 ニーズアセスメント、対象者の募集、教材開発、情報チャンネルの活用
進め方 レクチャー方式、及びワークショップ方式、および、フィールドワークを行う
行動科学概論 時間:2時間×1回 実務研修は、3-5回 時期:前期(4月~7月) 目的 行動変容に関する理論と具体例を通して現場での介入方法について学習する
内容 行動変容について、
進め方 レクチャー方式、及びワークショップ方式、および、外来診療での実務研修を行う。
プレゼンテーション 時間:2時間×4回 時期:後期(8月) 目的 相手の心に届くメッセージの伝え方、および、参加者のヘルスリテラシーに合わせた情報の提供方法について学ぶ
内容 情報の伝え方、カラーユニバーサルデザイン、レイアウトデザイン
進め方 レクチャー方式、及びワークショップ方式、および、健康教育演習を行う。
ヘルスリテラシーと
健康の社会的
決定要因
時間:1.5時間×1回 時期:前期(4月~7月) 目的 個人の健康のみならず、地域全体を俯瞰した健康に影響する要因についての理解を深める
内容 ヘルスリテラシーと生命予後、健康の社会的決定要因と地域の絆
進め方 レクチャー方式、及びワークショップ方式で学ぶ
ポピュレーション
ストラテジーと
ハイリスク
ストラテジー
時間:1.5時間×1回 時期:前期(4月~7月) 目的 地域の健康を守る際の個人への介入、および、地域への介入手法について、それぞれの特徴を理解し、目的に合わせたアプローチ方法について学習する
内容 関連要因の曝露と疾病リスクの関係、予防医学のパラドックス(Preventive Paradox)、USPSTF(the U.S. Preventive Service Task Force)
進め方 レクチャー方式、及びワークショップ方式で学ぶ
カリキュラム開発 時間:2時間×5回 時期:前期(4月~7月) 目的 ヘルスプロモーションを実践する上で、目標に合わせた方略の組み立て方について学習する
内容 ・左に該当する本プログラムとは別に実施するGP事業における講習を受けた上で、ヘルスプロモーションに特化した内容を行う。
・ インストラクショナルデザイン、カリキュラム開発(知識、技術、態度)
進め方 レクチャー方式、及びワークショップ方式、および、フィールドワークを行う
プログラム評価 時間:2時間×7回 時期:後期(8月~3月末) 目的 自らが実施しているヘルスプロモーションについて、質を評価し、カイゼンへつなげる方法について学習する
内容 ・左に該当する本プログラムとは別に実施するGP事業における講習を受けた上で、ヘルスプロモーションに特化した内容を行う。
・プログラム評価、プロセス評価、QI、PDCAサイクル
・ 介入方法と介入効果の評価
進め方 レクチャー方式、及びワークショップ方式、および、フィールドワークを行う
持続可能な
システム構築
時間:2時間×7回 時期:前期~後期(4月~3月末) 目的 介入効果を最大限に引き出すために必要不可欠な継続性を担保する手法について学習する
内容 ・システム・ベイスド・プラクティス
・介入効果の継続化、参加者への学習方法の工夫、個別化、エンパワーメント、リマインダーシステムなどフォロアップシステムの導入など、
・地域のリソースの活用とその効果
・個人・組織・コミュニティーのエンパワーメント 自治体、保健師などの地域の医療職、NPO、ボランティア、老人会など
進め方 レクチャー方式、及びワークショップ方式、および、フィールドワークを行う

注:具体的な講義日程に関しては、本コースを履修する方々の予定に合わせて決定します。

7.演習・地域研修項目

演習ならびに地域研修では、以下の2つの柱について学びます。

地域診断:4月から7月までの間に、講義と勤務地における地域診断を実施します。
1-2週間に1回程度の頻度で地域に出かけ、地域のキーパーソンの同定などを含めて地域を知り、地域の健康課題を同定します。
教育実践:9月から12月までの間に、地域診断を行った地域で教育実践を行います。地域診断で同定された健康問題に関することをテーマにヘルスプロモーションを実施します。

8.コース履修条件

ベーシックコース修了者ならびに日本プライマリ・ケア連合学会専門医取得者(取得予定者を含む)を要件とします。履修希望者は事前に面接、ヘルスプロモーションに関するエッセー(1,200字以内)を提出いただきます。
尚、必要に応じて学習を補完出来る教材、勉強会等を準備します。