筑波大学附属病院救急・集中治療科は、2020年に国内では42箇所目の高度救命救急センターの認可を受け、5年目を迎えました。県内各地域の救急医療の中核を担っている6 箇所の救命救急センターと連携し、難治症例や合併症を有する症例、診療にマンパワーを要する症例などについて、積極的な集約化を実施し、県民の皆さまに安心していただける救急医療の提供をめざしております。重症症例の集約化の一環として、茨城県防災ヘリを用いたピックアップ型ドクターヘリ事業にも参画し、本院救急医が現場にヘリで出動し、現場から診断・治療を開始する病院前診療を実施しています。県内各救命救急センター及び地域の中核となる救急医療施設のご支援もあり、お陰様で2023年厚労省救命救急センター充実度評価ではS評価をいただいております。
本院ICUでは、集中治療専門医がICUに専従し、診療科に関わらず重症術後管理、急変対応、重症救急患者に対応する「Closed型ICU」体制を導入しております。各種重症患者に対する集中治療の標準化を促進し、治療効果の向上と人工呼吸管理期間・ICU滞在期間の短縮や、重症患者の予後の改善効果を上げています。診療上の安全性を担保し、多職種・複数診療科によって実施されるチーム医療を推進しながら、効率的な診療の分担により医療者個々の負担軽減を図っています。
当科は災害医療にも力を入れています。有事の際の診療継続性を計画したBCP(Business Continuity Plan)の随時見直し、アクションカードに基づく災害訓練の定期的実施、求められる現場への医療スタッフの派遣を実施しています。2019年台風15・19号における被災地派遣、2020年ダイヤモンド・プリンセス号の搬送業務、2024年1月発災の能登半島地震などのDMAT隊派遣を含め、つくばマラソン、東京オリパラ、G7広島サミットなどのマス・ギャザリングイベントにおける医療スタッフ派遣要請にも対応しております。つくばマラソン、まつりつくば等の地域のイベントの救護所においても、セーフティネットの一角として多職種スタッフの現場派遣に対応しています。新型コロナウイルス感染症蔓延時には、県入院調整本部と連携して、人工呼吸・ECMO管理を要する最重症例の受け入れを実施しました。このように、平時も有事も、地域の皆さまと各医療機関が安心できる、地域救急医療のセーフティネットの構築と、災害に強い病院づくりを進めています。
さらに当科は、優秀な救急科専門医・集中治療医を数多く育成し、県内各救急医療施設に派遣して県内全域の救急医療を活性化させる医育機関としての役割を担っています。これからの時代の救急・集中治療を担う若手医師が毎年数多く育っています。また2023年4 月より配属された病院救急救命士2 名により、更に地域の救急医療を発展・充実するように日々奮闘しています。
1) 24時間365日重症救急患者を受け入れ、状態の安定化と原因精査を実施します。
2) 各専門診療グループと連携・協力体制の下、人工呼吸管理・血液浄化法・心肺補助装置を含めた最先端の集中治療と、手術治療やカテーテル治療などの各種専門治療を実施します。
3) 近隣の地域医療機関と連携して、ドクターヘリやドクターカー搬送を広く応需し、県内外の難治症例の受け入れを推進します。また、防災ヘリによるピックアップ型ドクターヘリにより、現場に救急スタッフを派遣して、早期治療介入を進めます。
4) 災害時にも、多数傷病者の応需とDMATチームの派遣が常時可能です。
1) ICU12床、PICU 8 床、HCU28床の重症集中治療可能病床を保有し、人工呼吸管理、血液浄化法、心肺補助装置など、重症患者に対する各種集中治療を実施します。
2) Closed ICU体制により、救急・集中治療科が、各診療科の術後や院内急変症例に対して、気道管理、呼吸管理、循環管理、栄養管理、感染対策を主となって実施し、各診療科と密接に連携しながら、重症患者の超急性期~急性期における集中治療を実施します。
3) 看護師、臨床工学技士、理学療法士、薬剤師など、多職種スタッフと密接に連携し、早期離床と合併症の予防、早期社会復帰を実現します。
4) 院内感染対策チーム、栄養管理サポートチーム、呼吸管理サポートチーム、など、多職種・複数診療科スタッフで構成される各専門サポートチームの協力下に、多角的な連携・診療を推進します。
・ 敗血症に対する臓器障害と合併症の評価法と治療法の研究
・ ICUにおけるせん妄の診断・治療効果を可視化する研究
・ 重症患者の心拍数コントロールと予後の関係に関する研究
・ 熱傷入院患者レジストリーを用いた熱傷診療の予後改善に関する研究
・ 集中治療を要する重症患者のビッグデータベース解析を用いた多施設研究
24時間体制(詳しくはこちら)
肩書き | 氏名 | 専門分野 | 専門医 |
---|---|---|---|
救急・集中治療部長、高度救命救急センター長(教授) | 井上 貴昭 | 救急医学、集中治療医学、外傷外科学 | 救急科専門医 / 日本救急医学会指導医 / 集中治療専門医 / 外科専門医 / 日本外科学会指導医 / 熱傷専門医 / 外傷専門医 / 麻酔科標榜医 / ICD(Infection Control Doctor) / 日本医師会認定産業医 |
副部長、高度救命救急副センター長(講師) | 榎本 有希 | 救急医学、集中治療医学、小児科学 | 救急科専門医 / 日本救急医学会指導医 / 集中治療専門医 / 小児科専門医 / 日本小児科学会指導医 |
講師 (病院教授) | 下條 信威 | 救急医学、集中治療医学、循環器病学 | 内科学会認定内科医 / 日本内科学会指導医 |
講師 | 丸島 愛樹 | 救急医学、集中治療医学、脳神経外科学 | 救急科専門医 / 脳神経外科専門医 / 日本脳神経外科学会指導医 / 脳卒中専門医 / 日本脳卒中学会指導医 / 脳血管内治療専門医 / 日本脳血管内治療学会指導医 / 日本脳卒中の外科学会指導医 / 日本脳神経外傷学会指導医 |
病院講師 | 松本 佑啓 | 救急医学、集中治療医学、整形外科学 | 救急科専門医 / 整形外科専門医 |
病院講師 | 柳澤 洋平 | 救急医学、集中治療医学、整形外科学 | 整形外科専門医 |
病院講師 | 星野 哲也 | 救急医学、集中治療医学 | 救急科専門医 / 集中治療専門医 / 麻酔科標榜医 / ICD |
病院講師 | 高橋 利英 | 救急医学、脳神経外科学、脳卒中 | 脳神経外科専門医 / 日本脳神経外科学会指導医 / 脳卒中専門医 / 日本脳神経外傷学会指導医 |
病院講師 | 鈴木 貴明 | 救急医学、国際保健 | 救急科専門医 |
病院講師 | 三浦 健 | 救急医学、集中治療医学、神経内科学 | 内科学会認定内科医 / 総合内科専門医 / 神経内科専門医 |
病院講師 | 花木 裕一 | 救急医学、集中治療医学、循環器病学、臨床不整脈学 | 内科学会認定内科医 / 総合内科専門医 / 循環器専門医 / 不正脈心電学会不整脈専門医 |
病院助教 | 十時 靖和 | 救急医学、整形外科学 | 整形外科専門医 |
クリニカル フェロー | 鈴木 喜一 | 救急医学、集中治療医学、麻酔科学 | 麻酔科専門医 |
クリニカル フェロー | 坂本 彩香 | 救急医学、集中治療医学 | 救急科専門医 / 内科学会認定内科医 / 集中治療専門医 |
クリニカル フェロー | 園部 藍子 | 救急医学、集中治療医学、循環器外科学 | 外科専門医 |
クリニカル フェロー | 小野 貴広 | 救急医学、集中治療医学 | 救急科専門医 |
クリニカル フェロー | 冨沢 夏美 | 救急医学、集中治療医学 | 救急科専門医 |
クリニカル フェロー | 長友 一樹 | 救急医学、集中治療医学 | 救急科専門医 |
教授 (古河坂東地域医療教育センター・茨城西南医療センター病院) | 武田 多一 | 救急医学、集中治療医学、災害医学 | 救急科専門医 / 日本救急医学会指導医 / 外科認定登録医 / 外傷専門医 / 熱傷専門医 / 日本組織移植学会認定医 / 社会医学系専門医・指導医 |
助教 (古河坂東地域医療教育センター・茨城西南医療センター病院) | 中村倫太郎 | 救急医学、集中治療医学、麻酔科学 | 救急専門医 / 内科学会認定内科医 / 内科専門医 / 麻酔科標榜医 / 麻酔科認定医 / 社会医学系専門医 / 日本医師会認定産業医 / 労働衛生コンサルタント |