放射線腫瘍科

診療案内

診療科の特徴

　筑波大学附属病院放射線腫瘍科は、国立大学で最多の放射線治療を行っており、エックス線治療各種、小線源治療、陽子線治療など様々な放射線治療が可能です。術後照射や、化学療法と併用した照射に関する相談にも応じており、状況により当科にて入院も可能です。

■エックス線治療

　最新鋭リニアックを備えており、従来の治療法に加え次のような治療法も行っています。

定位放射線治療：脳腫瘍、肺がん、肝がんなど小さい腫瘍が対象です。多方向から三次元的にエックス線を病巣へ集中照射する方法です、放射線の集中性が高いので、大量照射ができる結果、根治性が高い治療です。
強度変調放射線照射（IMRT）：前立腺がん、脳腫瘍、頭頸部がんなどが対象です。エックス線のエネルギーを病巣の形に合わせて照射する治療法です。病巣に近接した正常組織を避けながら治療できるので、副作用を減らしながら、病巣により多くの線量を投与できます。
全身照射：血液内科と協力して、骨髄移植の前処置として行っています。

■小線源治療

　放射線源を患部に挿入する治療法です。線源強度が強いため（高線量率）、照射は短時間で終了します。本院では小線源治療専用の治療計画用CTを配備し、下記の内容で一層精密な治療が可能となっています。

腔内照射：主に子宮頸がん、食道がん、中枢型気管支がんなどが対象です。病巣のある腔内に線源導管を挿入して照射します。多くの場合、外部照射後の追加照射として用います。外来照射も可能です。
組織内照射：主に子宮がんや膣がんなどで腫瘍が大きな場合や再発治療に威力を発揮します。線源導管は、局所麻酔下や硬膜外麻酔下で刺入します。従来の腔内照射のみでは根治困難な局所進行期の腫瘍でも制御が期待できます。国内有数の実績を自負しております。

■陽子線治療

　1983年からの実績があり、現在は病院に併設されたセンターで年間400例以上を治療しています。当科には放射線治療の基礎である放射線物理工学分野の専門家や医学物理士が専任で所属しており、品質・安全管理にも力を注いでいます。陽子線治療は従来のエックス線治療に比べ、病巣へピンポイントで照射することができ、周囲の正常組織へあたる線量が少ないので、放射線による合併症が少なくなります。肝がんや食道がん、肺がん、脳腫瘍などの治療の難しい腫瘍でもよい成績を上げています。現在では小児腫瘍、骨軟部腫瘍、一部の頭頸部悪性腫瘍、前立腺がん、肝がん、膵がん、大腸がんの術後局所再発、早期肺癌の陽子線治療が保険診療となりました。
　茨城県内唯一の特定機能病院の放射線治療部門として、県内のがん診療拠点病院をネットワークで結び、各病院の放射線治療部門と密接に連携を取り診療を行っています。紹介元の主治医の先生方や、院内の各臓器の専門診療科との緊密な協力の下で、がんの患者さんに最も良い治療を提供できるよう心掛けています。

対象疾患

　固形がん全般（早期～進行期）において適応となります。血液腫瘍についても、全身照射などの適応があります。各臓器の専門家と相談して最適な治療法を検討します。セカンドオピニオン目的のご紹介にも対応いたします。

先進医療等への取り組み

■陽子線治療

　保険診療外の腫瘍は先進医療の制度として実施しています。対象疾患は統一治療方針の下で全国一律の適応基準に沿って治療を行っています。治療費は患者さん負担となります。一部の疾患については臨床試験を行っており、該当する場合の陽子線治療費は陽子線治療センターで負担しています。
　陽子線治療を希望される患者さんには、診療時に詳しく説明をしています。なお、対象外の病態や、経済的な負担のために陽子線治療を受けることのできない患者さんには、次善の治療法を提示しています。

■ハイパーサーミア（温熱療法）

　がんは熱に弱いことがわかっています。体内のがん組織の温度を上昇させる治療法がハイパーサーミアであり、放射線治療や化学療法に併用すると治療効果が高まることが知られています。骨軟部腫瘍、膵がん、骨盤部腫瘍などで効果が確認されており、本院では主に放射線治療との併用で活用しています。

■ホウ素中性子捕捉療法（BNCT）

　がんにホウ素を集めて中性子を照射し、がん組織内で強力な粒子線を発生させる治療です。
　浸潤性の強い難治腫瘍や、通常の放射線では再治療が困難な場合の新しい治療法として期待されています。世界的に注目を集めており、筑波大学では、独自に開発した治療装置を用いて、膠芽腫（脳腫瘍）に対する医師主導治験を実施中であり、早期の臨床応用を目指しています。